1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60480052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 英一 京大, 農学部, 教授 (40026414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間藤 徹 京都大学, 農学部, 助手 (50157393)
西村 和雄 京都大学, 農学部, 助手 (50135547)
小林 達治 京都大学, 農学部, 助教授 (60026416)
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Keywords | 耐塩性 / 塩生植物 / ヨシ / ナトリウム吸収 |
Research Abstract |
前年度までの結果から、河口などの汽水域に生育するヨシでは根圏のNaClによる高浸透圧に対して葉身にK,ショ糖を貯えて吸水力を確保し、同時にNaClの過剰吸収を抑える機構をもっていることが明らかになった。イネなどの単子葉植物では葉身のNa濃度を低く抑える能力と耐塩性の強さに高い相関のあることが報告されており、ヨシのNaCl吸収を抑制する機構は耐塩性と密接に関係すると考えられた。そこで放射性同位元素【^(22)Na】で標識したNaClの吸収速度をヨシ(耐塩性)とイネ(塩類感受性)とで比較したところ、1日あたりイネはヨシ1.6倍のNaを吸収し、さらに全吸収量の60%が地上部へ転送されていた。一方ヨシでは48%に抑えられており、根のNa吸収と地上部へのNaの転送を抑える能力がイネよりも秀れていることが示された。この総吸収量の差が根からのNa排出速度の差に基づく可能性を検討するために【^(22)Na】を負荷した後に【^(22)Na】を含まない培養液に移し、24時間後のNa排出量,地上部,地下部の残存量の変動をみた。ヨシでは24時間で吸収された【^(22)Na】のうち33.5%が排出された。このとき地上部の【^(22)Na】は80%、地下部のそれは60%に減少した。一方イネでは30.3%と排出量に大差はないものの地上部での減少が8%、地下部からは60%であった。これらの結果からヨシの場合には地上部に一旦送られたNaも排出されるのに対し、イネでは地下部のNaが排出されるだけであることが明らかになった。さらにヨシにおけるNaの吸収速度は、根を脱共役剤ジニトロフェノールやCCCPで処理することで2〜3倍に増加した。そこで更に詳細に検討したところこれらの薬剤のNa吸収抑制の阻害はこれらの薬剤が地上部Naの排出を抑えることによる見かけの抑制阻害であることが示された。さらにこれらのメカニズムについて検討中である。
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