1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60480058
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大嶋 泰治 阪大, 工学部, 教授 (20029242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 弘之 大阪大学, 工学部, 助手 (20151160)
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Keywords | サッカロミセス酵母 / ホスファターゼ生産 / 調節遺伝子 / 遺伝的信号伝達 / プロモーター検索 / ベクター |
Research Abstract |
酵母のホスファターゼを対象とした遺伝子発現調節機構の研究および酵母を宿主とするプロモーター検出ベクターの改善を行った。 1)遺伝子発現調節系の解析:酸性ホスファターゼと無機リン酸導入酵素の生産は培地中の無機リン酸により調節され、濃度の高い時には抑制される。そこには、PHO2,PHO4,PHO80,PHO81およびPHO85の5個の調節遺伝子産物が働いている。61年度は、PHO2,PHO4およびPHO81遺伝子の転写と翻訳を調べ、以下の結果を得た。構造遺伝子の発現に必須な正因子を生産するPHO4は、低レベル構成的に転写され、翻訳を含めて他の調節遺伝子の影響を受けない。PHO2の転写も低レベルであるが、低リン酸培地中では、転写量は2-3倍に上昇する。また、活性なPHO2タンパクによりPHO2自身の発現量が減少するが、他の調節遺伝子の影響は受けない。これに対し、PHO81遺伝子の転写はリン酸により抑制され、Pho2とPho4変異細胞では停止し、Pho80とPho85変異細胞では構成的となる。この結果、この遺伝子発現調節系は、量的に調和した各調節因子からなる閉鎖回路を形成し、自律調節機構を持つと結論される。 2)プロモーター検索ベクターの改造:細胞内外の信号を受信し、発現を司どる領域が、各構造遺伝子のタンパクコード部の5′上流にある。この領域を含むDNA断片のクローニングを目的として、60年度はpVC717プラスミドを構築した。61年度は、これを用いて、プロモーター活性を持つDNA断片が容易に分離できることを認めた。また、培養基の糖源をガラクトースにすると発現を開始するDNA断片も得られた。しかし、翻訳段階で期待通りに働かない場合があり、その原因がATGコドンに近い上流にさらにATG配列が散在し、翻訳開始が乱されるためと考え、これを切除したプラスミドpVC727を構築した。このプラスミドに既知のヒスチジン遺伝子の5′上流を結合して、期待どうりに機能することを認めた。
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[Publications] K.Nisiwaki;N.Hayashi;S.Irie;D.-H.Chung;S.Harashima;Y.Oshima: Molecular and General Genetics. (1987)
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[Publications] K.Yoshida,Z.Kuromitsu,N.Ogawa,K.Ogawa,and Y.Oshima: "Regulatory circuit for phosphatase synthesis in Saccharomyces cerevisiae In:Phosphate Metabolism and Cellular Regulation in Microorganisms" American Society for Microbiology (Editors;A.Torriani-Gorini,S.Silver,E.Yagil,F.G.Rothman,and A.Wright), 7 320 (1987)