1986 Fiscal Year Annual Research Report
各種動物と人に寄与するクリプトスポリジウムに関する研究,特に宿主・寄生体関係
Project/Area Number |
60480086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
板倉 智敏 北海道大学, 獣医学部, その他 (30021695)
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Keywords | クリプトスポリジウム / 微絨毛 / 細胞内細胞質外寄生原虫 / 人畜共通原虫 / 鶏 |
Research Abstract |
1.前年度に引き続き、国内の野外におけるクリプトスポリジウム(CR)の感染状況を調査した。その結果、鶏では鳥取県,岡山県,長崎県は前年度同様に感染があったが、新たに兵庫県,広島県,北海道においても認められた。また、牛における新しい発生として、島根県,兵庫県,北海道が追加された。以上の調査で注目されることは、CRの国内での浸潤が次第に広域に及んでいることと、北海道で代表される厳寒の地でも本原虫が認められることである。後者については、世界的分布状況から特に変った点ではないが、本原虫のまん延の本態を知る上での一つの示唆を与える。すなわち、CRがコクシジウムに属するとは言え、その生活史はコクシジウムとは異なり、自家感染が主体であろうと推測される。 2.CRの宿主細胞への付着機序を知る目的で電顕的検索を行った。その結果、CRの付着と関連性をもつように、微絨毛が正常の長さより3〜4倍伸長していた。この現象の真の意義は不明であるが、本原虫が微絨毛由来の膜に包まれて生活するということから、両者の密接な関連が示唆された。また、ファブリキウス嚢上皮細胞のCR付着による変化を検討した。その結果、前記の微絨毛の変化に加え、粘液小胞の減数,消失,小胞体の拡張,大型ライソゾームおよび細線維状塊の出現が認められた。細線維状塊の出現はゴルジの発達のないことから、異常代謝産物の蓄積と考えられる。 3.鶏にCRを感染させると、感染後9-30日間は虫体寄生が見られるが、これ以降は再感染させても感染が成立しない。これには免疫事象が関与していることは明らかであるが、その機序がどのような性格のものであるかは不明である。原虫という寄生体からして恐らく細胞性免疫の関与によるものと推測されるが、この点については目下検討中である。
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[Publications] Itakura,Chitoshi: Avian Pathology. 14. 237-249 (1985)
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[Publications] 板倉智敏: 日本獣医師会雑誌. 38. 796-801 (1985)
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[Publications] 板倉智敏: 動生協会会報. 18. 13-18 (1985)