1986 Fiscal Year Annual Research Report
脂質代謝よりみた我が国の栄養摂取と循環器疾患との関連に関する研究
Project/Area Number |
60480184
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
島本 喬 筑大, 社会医学系, 助教授 (50143178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 光徳 筑波大学, 社会医学系, 講師 (10164089)
稲田 紘 筑波大学, 社会医学系, 助教授 (20028393)
小町 喜男 筑波大学, 社会医学系, 教授 (50134242)
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Keywords | エイコサペンタエン酸 / ドコサヘキサエン酸 / アラキドン酸 / リノール酸 / 虚血性心疾患 / 脳梗塞 / 血清総コレステロール / 魚介類 |
Research Abstract |
1.富山県の漁家集団の調査成績:(1)血清脂質の分析;40〜59才、男子132名に実施。血清中脂肪酸分析を行なった結果、アラキドン酸(以下、AA)4.2%、エイコサペンタエン酸(以下EPA)4.8%、ドコサヘキサエン酸(以下DHA)7.3%、リノール酸(以下LA)17.7%であった。(2)栄養調査の結果;(1)と対象に行なった。24時間思い出し法による魚介類の摂取量は、1日当り234gであった。船上食の影響を加味した1週間の摂取頻度と目安量の調査からは、1日当り300gを越えることが判った。(3)循環器検診と循環器疾患の調査成績;(1)の対象を含む40〜69才、男子、406名を対象に行なった。血清総コレステロールの平均値は、186mg/dlで、肥満者の頻度は、23%、高血圧者の頻度は、41%であった。虚血性心疾患の発生は、5年間で0例、脳梗塞の発生率は、千人年当たり4.4であった。2.漁家集団と農村の成績(昨年報告)の比較:(1)漁家に比し農村は、AA(4.2%)は違わず、EPA(2.5%)、DHA(4.7%)は少なく、LA(21.7%)は多かった。(2)農村の魚介類の摂取量は、1日当たり100gで、漁家の1/2〜1/3であった。(3)漁家に比し農村は、血清総コレステロールの平均値(183mg/dl)と肥満者の頻度(21%)は違わず、高血圧者の頻度(29%)は少なかった。虚血性心疾患の発生率(1.6/千人年)は有意に高く、脳梗塞の発生率(2.0/千人年)は有意に低かった。(4)以上より、漁家集団では、高血圧者が農村に比し多いにも関わらず虚血性心疾患の発症が少なく、この原因として魚介類の大量摂取により、EPA,DHAなどのw3系脂肪酸が血清中に増加し、その発症を抑制している可能性が認められた。しかし、脳梗塞は漁家集団で多く、虚血性心疾患と同様の機序では、脳梗塞の発症は抑制され難いと考えられた。
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Research Products
(1 results)