1987 Fiscal Year Annual Research Report
腎疾患の進展・増悪に関するネフロンの形態・機能因子の解析
Project/Area Number |
60480201
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
飯野 靖彦 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (60134706)
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Keywords | 慢性腎不全 / 腎機能 / ロイコトリエン / 甲状腺ホルモン / 腎炎 |
Research Abstract |
慢性腎機能低下(慢性腎不全)患者では,原因の如何に拘らず腎機能が進行性に増悪する. しかし,その増悪因子は確立されておらず,PTH,高血圧,アラキドン酸代謝産物,リン,カルシウムなどが考えられている. その増悪因子を解明し治療することが透析患者数の減少につながる. 初年度(60年度)では種々の腎疾患での腎機能悪化速度について検討を行い,第2年度(61年度)では,能状腺ホルモンの低下が腎機甲悪化速度と相関することを認め,さらに基礎的研究では実験腎炎(BSA腎症)においてロイコトリエン産生酵素の5ーリポキシゲナーゼ阻害薬TMKー688によって蛋白尿減少効果を認めた. 本年度(62年度)では甲状腺ホルモン低下のある慢性腎不全患者に甲状腺ホルモンのサイロキシンを少量投与し腎機能悪化速度に与える影響について検討したところ,サイロキシン投与により腎機能悪化速度が遅くなった. また,昨年度の基礎的研究からロイコトリエンが腎機能増悪に影響を与えることが明かにされていることから,本年度は5ーリポキシゲナーゼ阻害薬であるアゼプチンを慢性腎機能低下患者に投与したところ,蛋白尿の減少を認めた. 本年度の基礎的研究では尿中のロイコトリエン測定法を開発していたが,尿中に阻害物質が多数存在し,現在の方法では正確な測定は困難と判明した. 従って,第3年度における研究成果としては,腎機能悪化因子は多数存在するが,その中でも甲状腺ホルモンおよびロイコトリエンの影響が重要であることが明かにされた. また,甲状腺ホルモン投与および5ーリポキシゲナーゼ阻害薬の投与により腎機能悪化がある程度抑制されることが示された.
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