1986 Fiscal Year Annual Research Report
ヒノキアスナロ林の分布と群落種組成の成因に関する研究
Project/Area Number |
60540418
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
斎藤 員郎 山形大, 教養部, 教授 (70004356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 高義 山形大学, 教養部, 助教授 (90087148)
山中 三男 高知大学, 理学部, 教授 (50004461)
石塚 和雄 山形大学, 教養部, 教授 (90007097)
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Keywords | ヒノキアスナロ林 / 遺存群落 / 群落種組成 / 群落の成因 / 気候 / 花粉分析 / 植生史 / 種多様性 |
Research Abstract |
1.遺存群落としてのヒノキアスナロ林の分布と種構成の解析は、先年度の資料によって可能になった。それによると北上山地のものはコメツガ林の組成に近似する傾向がある。ここの種間関係とくに共存種関係を種多様性の測定を通して検討した。種数一面積関係,種数一個体数関係,種一優占度順位関係などの種多様度指数はブナ林やコメツガ林に比べて、ヒノキアスナロ混合林で高い。しかし、これらの指数はヒノキアスナロ純林の林床植生では極端に低下して、林床の植生の構成が林冠の種構成に関連しそのNicheの分割と不可分の関係にあることが推察される。とくにヒノキアスナロの優占度が高くなることは、単に光遮閉に止まることのみならず、葉堆の吸水性・保水性を通して林床環境の変化をもたらすことによる効果が期待される。 2.Thujopsis属とその近縁種の花粉の識別法はほぼ確立できたので、第四紀の古い年代から現世に至るまでの植生史を明らかにすることができる。とくに下北地方においては、花紛分析用試料としてほぼ完全なものを収集しているので、この地方の植生史の細部が明らかにできる見通しである。 3.桧山・下北・津軽地方を中心に中気候の解析を通してヒノキアスナロの分布もしくは分布密度との関係を検討した。それによると、一部で古生層など、古い年代の地質に結びついた分布があるものの、生育期の乾燥月数の多い地域ではヒノキアスナロの分布がみられないか、もしくは分布密度が低い傾向を示すことが明らかになった。このことは水文気候がこの樹種の遺存に深く係わっていることを示すもので、詳細な検討を展開する必要がある。今後、北上山地でも同様の検討を加えるとともに、山体の斜面方位などの地形的・小気候的スケールでの対応関係の分析によって確証が得られるものと考えられる。
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