1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60550431
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
小野木 重勝 豊橋技科大, 工学部, 教授 (10043598)
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Keywords | 日本近代建築 / 和風建築 / 宮延建築 / 和洋折衷技法 |
Research Abstract |
標記課題の研究において、本年度は、明治20年代に造営された高輪御殿(明治25年完成)・麻布御用邸(明治26年完成)・沼津御用邸本邸(同年完成)・葉山御用邸本邸(明治27年完成)・宮の下御用邸(明治28年完成)・日光御用邸(明治29年完成)の6殿邸の和洋折衷技法について調査研究した。昨年度同様に、基礎資料である宮内庁書陵部蔵「内匠寮工事録」・管理部蔵図面をはじめとする関連資料の調査・分析に基づく実証的方法によって、各殿邸の主要建築について、材料・構造技法,装飾技法,施工技法を中心に、和洋折衷技法とその特色について検討した。とくに、宮の下御用邸・日光御用邸では、主要建物の一部が現存しており、これら遺構の現地調査も併せて実施し、建築的特色を具体的に把握することができた。 上記6殿邸では、和風建築を主体に構成されているところに、皇居造営後の時代的特色をみることができる。6殿邸は、それぞれ規模・格式等に差違が認められるが、機能別構成による殿邸の基本型が、この年代にほぼ確立したことが判明する。これら6殿邸においては、立式生活様式をとり入れた謁見所・食堂・学問所・玉突所などに洋式が導入されているが、全体的には和風が濃厚である。洋式材料・技法は、躯体部では基礎の煉瓦積・コンクリートに限定されており、軸組・小屋組等は伝統手法を継承しているが、和風小屋組の改良・補強金具の発達が際立っている。内部装飾では、絨氈・寄木張り・壁張り・建具・照明器具等に洋式が導入されている。明治20年代のこれら一連の殿邸建築は、上記基本型の確立に併せて、共通の様式・技法をもつことが判明するとともに、現存遺構調査の結果、明治20年代後半になると、殿邸建築の意匠・施工技術が、極めて洗練されてきていることが判明した。次年度予定の明治30年代以降の6殿邸の調査研究によって、発達の様相を一層明白に把握できると思われる。
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