1988 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸鎖電子伝達系のNADH酸化酵素に対する新しい特異的阻害剤の検索
Project/Area Number |
60560132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 茂男 東京大学, 農学部, 助手 (50011987)
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Keywords | 呼吸鎖電子伝達系阻害剤 / NADH酸化酵素阻害剤 / 分子プローブ |
Research Abstract |
ピエリシジンとロテノンがNADH酸化酵素と結合する様式を化学的に予想し、前者の複素環母核部分と後者の脂溶性多環状構造部分の組み合わせを検討した。基本的な合成経路は60年度に確立しているので、主としてその方法に従って合成を行った。時間的制約により本年度は多環状構造のうち2環を備えた化合物について重点的な検討を行った。生理活性の測定は、ウシ心筋より調製した亜ミトコンドリアを使用し、NADHを基質として添加した時に観測できる酸素消費をクラーク型酸素電極により定量する方法を採用した。環状構造を有する化合物のうち、2環性の脂溶側環部にアルキル置換基の無い群では阻害活性が認められなかった。側環部α位に脂溶性アルキルを導入したものでは、分子全体の脂溶性が改善されたものの阻害活性発現には至らなかった。しかし、側環部β位にアルキル基を導入した場合には、強力なNADH酸化酵素の阻害が発現されることが判明した。また、母核部分からメチレン基をへだてて芳香環構造を導入した場合にも強力な活性が認められた。とりわけ、最後の群の化合物は簡単な合成法を適用できるので多くの化学修飾が容易に実施できることを意味している。これらの基礎的知見は、NADH酸化酵素の阻害剤受容部における疎水性部分の空間的広がりを検証するための、すぐれた分子プローブ創製に活用できる。また、多環性構造を有する合成化合物も、適確な脂溶性部分の構築を施すことにより活性が発現されることを証明したので、「ロテノン類似の環構造を有し、ピエリシジン型母核を含む化合物は、両者の活性特性を兼備できる」という、研究着手時の予想が妥当であったことを裏付けた。今後は、さらに厳密な構造活性研究を展開し、ミトコンドリアを用いるインビトロ試験での活性向上を意図すると同時に、殺虫殺菌などの生物個体に及ぼす活性発現条件についても検討を加えたい。
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