1986 Fiscal Year Annual Research Report
鉄過剰症の組織障害に関する基礎的研究(特に酸素ラジカル発生能との関連について)
Project/Area Number |
60570159
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
粟井 通泰 岡山大, 医学部, 教授 (00089898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定平 吉都 岡山大学, 医学部, 助手 (30178694)
林 肇輝 岡山大学, 医学部, 助教授 (70033222)
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Keywords | 鉄過剰症 / ヘモジデリン / 酸素ラジカル / 鉄錯体 / 鉄の細胞障害 |
Research Abstract |
1.鉄のweak chelating compoundであるFerric nitrilotriacetate(【Fe^(3+)】-NTA)をラット腹腔内に長期注射する事により、ヒトのHemochromatosisに相当する病変を実験的に作ることができ、2.このラットにみられる重症の糖尿病がラ氏島における鉄の沈着に由来することを見出した。3.【Fe^(3+)】-NTA一回注射後、血中に一過性にGOT,GPT,γ-GPTの上昇を見出し、肝細胞膜系の脂質過酸化は、【Fe^(3+)】-NTAによることを明らかにした。4.【Fe^(3+)】-NTAによる脂質過酸化は、【Fe^(3+)】-NTAが酸素をsinglet oxygenに変換することにより惹起することを解明した。5.これらの【Fe^(3+)】-NTAによる鉄の細胞障害のモデル実験結果をふまえて、(1)ウェア(Weir)等の法により輸血脾からヘモジデリン(Hs)を抽出精製し、その精製品中に鉄(28.6±0.2%),燐(0.15±0.0002%),リポフスシン(9.4±1.1 unit/mg Hs)が含まれることを確認した。(2)このヘモジデリン自身にはリノレン酸を基質としたラジカル発生による水素取込み反応を認めることはできなかった。(3)そこで生体内のligandであるアスコルビン酸でHs中の鉄を可溶化する可能性を求めると、吉野らの既報のごとく、PH5.0以下で著明な可溶化が認められた。(4)クエン酸,ADP,コハク酸,DesferalなどではPH4.0においても可溶化は殆んど認められなかった。(5)しかしクエン酸に還元剤GSHを添加するとPH5.0以下で強い可溶化が認められ、GSH自身にはこの可溶化作用は殆んど認められなかった。またDehydro ascorbateには可溶化能はみられなかった。(6)生体内で存在し得る鉄錯体のPH4.0から7.4の間で【H_2】【O_2】を添加した時に生じる水酸化ラジカル(・OH)産生能力を比較した結果、PHが低いほど水酸化ラジカル産生能は高く、PH7.4では殆んど認められなかった。この結果、細胞内で【H_2】【O_2】を基質として鉄錯体が惹起し得る・OHラジカルによる細胞障害が細胞内のPHで左右されることが示された。【Fe^(3+)】-NTAのモデル実験で得られた結果を参考にして生体内で生じ得る鉄錯体による細胞障害の可能性が実証された。
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[Publications] Teruyuki Kawabata: Acta Med.Okayama. 40(3). 163-173 (1986)
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[Publications] Shu Nakamoto: Biochimica Biophysica. 889. 15-22 (1986)
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[Publications] Michiyasu Awai: Acta Haematologica Japonica. 49(8). 154-155 (1986)
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[Publications] Michiyasu Awai: Acta Haematologica Japonica. 49(8). 186-195 (1986)
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[Publications] 山田雅保: 組織培養. 13(2). 47-52 (1987)
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[Publications] 粟井通泰: 組織培養. 13(2). 53-58 (1987)