Research Abstract |
本調査研究では, 高齢化の中心的な人口, つまり定年退職者, 70才以上高齢者, 老人介護者を精神健康障害のハイリスクグループとして取り上げて検討した. 推定された神経症群の割合について一般人口と単純に比較してみると, 北区・杉並区人口28.6%, 市川市人口20.6%に対し定年退職者16.6%, 70才以上高齢者13.4%, 老人介護者21.1%と概して低い. 60才台の年齢層に合わせてみても特に高いわけではない. また, 燃えつき状態についてみても老人介護者24.4%と看護者(全国)31.7%, 医師(全国)16.0%, 教員(市川市)41.2%と比較すると, とくに高いわけではない. しかしながら, 食事, 排泄など日常生活能力に障害のある老人の介護者は行動能力別にみて36〜67%の高い燃えつき状態にある者がおり, とくに「意志の伝達ができない」「入浴の介助が必要」「着脱の介助が必要」な場合の約半数の介助者の高い燃えつき状態にある. また, 高齢者の場合にも日常生活行動の障害が大きく関連しており, 障害が多少みられても30%程度の人に神経症群が推定できる. また, 定年退職者について推定される神経症群の割合は, 75才以上, 定年までの勤続年数が短かく10〜19年, 今の仕事に不満, 以前の会社と関連のない会社に雇用されている. 家人の病気などの家庭の事情で仕事に就けないと, をの比率は高い. そこで, 定年退職者や高齢者や老人介護者の人生モラールや神経症・抑うつ症状に影響を及ぼす心理社会的背景を検討すると, 日常生活行動能力の障害が大きくかかわり, 高齢者も介護者もイライラの種がつのりストレスをかかえるが, それらのストレスに逃避的, 代償的な対処行動をとりつづけ, 「自分では解決が図れず, 不快な思いばかりしてきた」無力体験を味わい続けることにある. これに対し, 生きがいの対象を多くもっていたり, また, 情緒的に支援してくれる人や手段的に支援してくれる人をもつことが症状形成を緩和させる.
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