1986 Fiscal Year Annual Research Report
悪性脳腫瘍における細胞性免疫能低下の病態に関する研究
Project/Area Number |
60570658
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
菊地 顯次 秋大, 医学部, 助手 (40125711)
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Keywords | 脳腫瘍 / 細胞性免疫 / 免疫抑制酸性蛋白 / 免疫抑制因子 / リンパ球 |
Research Abstract |
私はこれまで免疫抑制酸性蛋白(IAP)が悪性脳腫瘍患者の血清中で有意に増加し、脳腫瘍の悪性度を比較的よく反映して、診断や病態の推移を判定する際の腫瘍マーカーとして有用であること、さらにIAPが脳腫瘍患者の細胞性免疫能を抑制する血清因子の一つであることを報告してきた。今回私は脳腫瘍患者において血清IAPを測定し、治療前のperformance status(PS),血沈,CRPなどその相関を検索し、治療効果判定のパラメータとしてのIAPの意義を検討した。さらに末梢血Tリンパ球サブセットを解析し、血清IAPとの相関も併せて検討した。現在まで病理診断の確定した脳腫瘍46例を対象とした。内分けは男性24例、女性22例、年令は7-74才で、グリオーマ16例、非グリオーマ系腫瘍21例、転移性脳腫瘍9例であった。結果として、(1)PSがgrade 0-2の軽症24例の平均血清IAP値は393μg/mlで正常対照群(30例、349μg/ml)との間に有意差はなかった。しかしgrade 3-4の重症22例では陽性率が55%で平均549μg/mlであり、IAPはPSの増悪に伴って有意に増加していた。(2)血清IAPが治療前後で経時的に測定された10例(グリオーマ8例転移性脳腫瘍2例)のうち7例は術前IAP値が500μg/ml以上の高値を示したが、5例は治療後にPSとCTでの改善を反映して血清IAPが正常化した。(3)血清IAPと血沈の間には正の相関が認められたが、CRPとの間には明らかな相関は認められなかった。(4)OKT4/OKT8比は血清IAP高値群で低下の傾向を示したが、正常群との間に有意差はなかった。従って脳腫瘍患者の血清IAPはPSをよく反映し、治療効果の判定や術後経過の観察に有用であった。抗ヒトリンパ球モノクローナル抗体と免疫組織化学的手法(Immunoperoxidase法)を組み合わせて宿主免疫反応の局所的発現と考えられる脳腫瘍組織内へのリンパ球浸潤を定量的に解析し、IAPとの関連からその意義を検討する研究は進行中であり、結論は得られていない。
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[Publications] K.Kikuchi;H.Goto;M.Kowada: Acta Neurochirurgica. (1987)
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[Publications] K.Kikuchi;H.Goto;M.Kowada: Journal of Neurosurgery.
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[Publications] 菊地顕次,後藤博美,古和田正悦: 脳と神経.
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[Publications] 後藤博美: 秋田医学. 12. 425-440 (1985)