1986 Fiscal Year Annual Research Report
関節軟骨の変性と修復に関する超微形態学的並びに組織学的研究
Project/Area Number |
60570700
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
蟹江 良一 名古屋市大, 医学部, 助教授 (80080000)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲本 正博 名古屋市立大学, 医学部, 研究員
河合 博 名古屋市立大学, 医学部, 研究員
今泉 司 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (70080033)
|
Keywords | 関節軟骨の変性 / 関節軟骨の修復 / 関節軟骨の加齢・老化 / 軟骨細胞変性過程 / 関節軟骨の電顕所見 / 軟骨細胞変性物質 |
Research Abstract |
われわれのこれまでの各種条件下での動物実験や臨床材料での関節軟骨の諸病態を考慮して、加齢並びに変性所見を超微形態学的に検討し、これらの本質を理解することを目的とした。昨年度に引き続き研究を行い、〔【I】〕ラットの股及び膝関節を中心に、幼時期から老齢期まで経時的に試料を採取し、また〔【II】〕ヒトの切断肢や老人の手術時採取試料を対象として、その関節軟骨につき組織化学的並びに電子顕微鏡的(SEM,TEM)に観察、検討した。同時に〔【III】〕関節軟骨の加齢的退行変性の代表疾患である変形性関節症と比較した。その結果新たに次の如き成果を得た。(1)SEM所見では、軟骨表面は加齢とともに基質物質が減少消失し、膠原々線維が露出し、均等に粗造化が進行するが、変形性股関節症ではこれが不均等となる。老齢期では軟骨細胞の露呈、剥脱など変性所見を認める。(2)TEM所見では、細胞内小器官は幼時期には、高度に発達し一部嚢胞状を呈し無定型物質を容れる多数の粗面小胞体が特徴的で、旺盛な細胞活性を示す。(3)中年期では水様変性の前段階と考えられる細胞が目立つ。(4)成人の深層細胞では脂肪滴、大空胞の増加をみ、その周辺での多量のグリコーゲン顆粒の蓄積や、これより低電子密度ではあるがほぼ等大の顆粒状物質の密在所見、その上著明な細胞内フィラメントの存在は細胞機能の低下や代謝異常さらに変性の進展を示唆する。(5)老齢期では雲絮状物質が一塊となって多くの細胞の胞体内を占め、これが充満し破壊寸前の様相を呈するものもある。これは変性物質と考えられ、この形成には粗面小胞体の関与が推察される。以上の如く、従来あまり分っていなかった軟骨の加齢変化と変性に関するいくつかの知見を得た。今後さらに検索を進め、軟骨変性の本態と修復との関連を解明すべく、ひいては老化予防の可能性を追求すべく研究を継続する。
|
-
[Publications] Ryoichi KANIE et al.: J.Clin.Electron Microscopy. 18. 465-466 (1985)
-
[Publications] 蟹江良一: 医学のあゆみ. 136. 108-111 (1986)
-
[Publications] Ryoichi KANIE: Proc.【XI】th Int.Cong.on Electron Microscopy. 3057-3058 (1986)
-
[Publications] Ryoichi KANIE et al.: J.Clin.Electron Microsopy. 19. (1986)