1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60580114
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
新井 節男 関西学院大, 公私立大学(その他), 教授 (20079669)
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Keywords | 身体運動文化 / 健康文化 / 運動文化 / 舞踊 / 力石 / 車 / 日欧比較 |
Research Abstract |
身体運動文化の比較研究をするうちに、次のことに注目すべきであるとの結論をえた。それは現代人の活動性には健康文化と運動文化の二面性が存在するということである。ごく普通の日常労働活動を含んだ市民生活を営む人々にとっては、日々の身体のコンディションづくりが肝要であって、そこでは社会一般の日常時な事柄、すなわち生活周辺の文化との結びつきが問題になってくる。このような普通人の健康維持に関わる文化を健康文化と考えた。一方、特殊な状況環境下に自分をおいて、対人的,対物理的,対自然構成物的なチャレンジを主体とする身体運動を行う方向性がある。一般にスポーツと呼ばれるものである。私はこれを先の健康文化に対応させて運動文化と考えた。 人類の生活文化史の中で、競い合いを身体文化の中に持ち込むようになる動機としては、祈祷,遊び,戦闘があり、長い歴史のうちに生活に見合った形に行動様式は改変されてきた。前年度の研究の中心は、弓矢,刀剣,組打ち,馬扱いなどといった戦闘中心のものであったが、本年度は踊り,力比べ,作り技,通り道といった、いわば祈り中心の運動文化を研究の中心とした。日本の押し鎮める舞踊と西欧の伸び上がる舞踊,アナログ型の力石とデジタル型のバーベル,ダンベル,座り込んで手前に引く大工と腰かけて押し出すカーペンター,車輪を利用しない日本と車道を普及させたローマ文化など、日欧の対比では気候風土がもたらせた特性が浮かび上ってきた。 運動文化と健康文化という二面性をもつ健康運動文化の一端の解明の糸口を見い出した思いである。
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