1985 Fiscal Year Annual Research Report
雑種小麦育成のための新しい雄性不稔・稔性回復系の開発
Project/Area Number |
60860001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
常脇 恒一郎 京都大学, 農, 教授 (20026438)
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Keywords | パン小麦 / 一代雑種 / 雄性不稔・稔性回復系 / 雄性不稔系統 / 維持系統 / kotschyi細胞質 / uniaristata細胞質 |
Research Abstract |
過去25年間にわたり、チモフェービ小麦のもつG型細胞質を利用してパン小麦の一代雑種を育成する努力が世界中でなされてきたが、未だその実用化をみるに至っていない。この最大の原因は同細胞質に対する効果的な稔性回復遺伝子が発見されていないことによる。本研究は、これとは細胞質型を異にするAegilops kotschyi(【S^v】型)及びAl,uniaristata(【M^u】型)の細胞質と、スペルタ小麦に存在するこれに対する雄性不稔遺伝子(rf)を利用して、一代雑種小麦の育成に必要な新しい雄性不稔・稔性回復系を開発することを目的とするものである。本年度実施した研究の概要は次のとおりである。 1.反復戻交雑による雄性不稔系統の育成-【◯!1】雑種の自殖,【◯!2】次代での雄性不稔個体の選拔,【◯!3】実用品種花粉による戻交配、の3ステップを反復することにより、【S^v】及び【M^u】細胞質とそれらに対するrf遺伝子を3実用小麦品種に導入することを試みた。世代短縮により【B_2】〜【B_4】世代まで育成したが、自殖次代での完全雄性不稔個体の出現率は2〜3%と極めて低率であった。 2.雄性不稔系統と維持系統の並行的育成-雄性不稔個体の出現頻度を高めるため、維持系統(後述)の育成を並行的に行うことを試みた。すなわち、実用品種とスペルタ小麦の【F_1】を実用品種で戻交雑する傍ら、【S^v】及び【M^u】型細胞質をもつスペルタ小麦(母親)×実用品種の【F_1】にパン小麦細胞質(B型)をもつ【F_1】の花粉を交配した。現在、B,【M^u】,【S^v】型細胞質をもつ【F_2】世代とB型細胞質をもつB1世代を栽培中である。 3.維持系統の育成-B型細胞質とrf遺伝子をホモにもつ系統が細胞質雄性不稔系統の維持・増殖に不可欠であり、このような系統を維持系統という。実用品種とスペルタ小麦の【F_2】を個体別に、【S^v】型細胞質をもつ雄性不稔系統に検定交雑してrfホモ個体を選拔し、これを自殖して計5系統の維持系統を確立した。
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Research Products
(1 results)