1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60870005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久野 宗 京都大学, 医, 教授 (50142295)
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Keywords | ペプチド / 受容体 / mRNA / イオン |
Research Abstract |
ペプチド作動性ニューロンは中枢神経系にも末梢神経節にも存在する。しかし、これらの細胞は小さく、ペプチド受容体の活性化に伴うイオン機構の解析は困難である。本研究は直径約1mmのアフリカツメガエルの卵細胞にペプチド受容体分子を発現させ、その受容体のイオン機構を解析することを目的とする。この目的のために、ラットの脳からmRNAを抽出し、このmRNAをツメガエルの未受精卵に注入した。注入の数日後に、卵細胞に2本の細胞内電極を刺入し、電圧固定下において種々のペプチドを潅流液に加えた。この結果、現在までに、vasopressin,TRH,neurotension,angiotensin II,substance Pの5種類のペプチド受容体の発現に成功した。これらの中からsubstance P(SP)に対する受容体に注目してイオン機構を解析した。生来の卵細胞にSPの受容体が存在する可能性があるが、卵細胞をactinomycin Dで数日培養した場合にはSPに対する応答が見られなかったのに対し、mRNAを注入した卵細胞は同一条件下でもSPに対して反応を示した。また、mRNAを分画した時、分子量の低い分画のmRNAの注入によってはSP受容体が発現しなかった。卵細胞を-50mVの膜電位に固定するとSP(4μM)の投与により、約20秒の潜時をもって内向き電流が観察され、この電流は約1〜3分間持続した。この反応の持続中に卵細胞の膜電位を変化させると、約-23〜-27mVにおいて電流は逆転し、これより脱分極側では外向き電流が観察された。この逆転電位は外液の【Cl^-】濃度の低下によって脱分極側に移動したが、外液の【Na^+】,【K^+】の濃度の変化に対しては不変であった。したがって、発現したSP受容体の活性化は【Cl^-】チャネルを開放すると結論される。ラットの脳からのmRNAの注入した卵細胞はセロトニンにも応答し、この応答のイオン機構はSP受容体と同一であった。この両者の受容体の活性化は同一の細胞内メッセンジャーに依存していると推測される。
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