1985 Fiscal Year Annual Research Report
ヘム蛋白特にP450における鉄1価中間体の検出のための高速酸素混合・測定装置試作
Project/Area Number |
60870012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐野 晴洋 京都大学, 医, 教授 (60025533)
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Keywords | α-オキシヘム / α-オキシヘムπ-中性ラジカル / 鉄1価化合物 / 【P_(450)】モデル |
Research Abstract |
ヘムが酸化的に開裂して胆汁色素を形成する過程はヘム→α-オキシヘム→α-ベルドヘム→α-ビリベルジンを経過する。α-オキシヘムのピリジン錯体は常温では鉄2価のπ-中性ラジカルの性質を示し低温ではポルフィリンπ系から中心鉄へ1電子が移動して鉄1価に還元される。この反応は温度依存性を示し可逆的である。ヘム蛋白にみられる酸素添加反応の場合にもこのようにヘム鉄とポルフィリン環との電子移動を伴う中間体が観察されるのではないかと思われる。このような一過性に出現する中間体を捕えるために、試作品として吸收スペクトル用とESR用の高速酸素混合装置を本年度完成した。共に窒素下並びに一定温度の酸素ガス下において電磁バルブを通じて瞬間的に反応液を観測セル中に導入して温度を変えながら、msec又はμ-secの高速で吸收スペクトルとESRの変化を同時に測定することができ、この系と高速スペクトルモニターをコンピューターで連結した。 次に【P_(450)】ヘム蛋白は第5配位子としてチオラートアニオン(【RS^-】)を有しているが、この【RS^-】が酸素活性化に際し、どのような役割を演じるかを調べるために【P_(450)】モデル物質として、プロトヘムとn-ブチルメルカプチドを用いて第5配位子の【S^-】から鉄への1電子移動で鉄1価の中間体の出現を予想して上記の高速混合装置を用いて実験を行った。しかしESRではシグナルを認めず、鉄2価の低スピン状態を観察するに止まった。しかし微量の【O_2】と【H_2】Oを添加すると明暸に3本線に分れる超微細構造をもつNOラジカル類似の未知のESRシグナルを観測した。このESRシグナルは何を意味するか、その本態の研究は次年度にもちこされている。更に【P_(450)】モデル化合物の酸素添加後のスペクトルで【〔#K#〕^-】を思わせる438,555,583nmに吸收をもつ一過性の吸收帯が現われることを確認した。これはoxenoidの前駆物質ではないかと考えられる。
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