1985 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトを含む動物細胞の長期無血清無蛋白培養法の開発ならびにその医学的応用
Project/Area Number |
60870018
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足達 敏博 京都大学, 医, 助手 (70025609)
|
Keywords | 無血清無蛋白培養法 / フィブロネクチン / 線維芽細胞 / ウロキナーゼ / ヌードマウス移植腫瘍 / 転移 / 細網細胞 / 悪性奇型腫 / 増殖因子 |
Research Abstract |
1970年以来、ヒトを含む動物細胞を長期間にわたって無血清条件下で増殖させる技術法の開発と、その細胞が産生する蛋白質の分離精製ならびにそれら蛋白質の医学的応用に関する研究を行ってきた。この研究で、(1)マウス由来線維芽細胞株(m細胞、F細胞)、マウス細網細胞株(MR細胞、SP細胞)等の各種細胞株を外部から血清や蛋白質などの増殖因子を全たく添加しないで、その組成の明確な完全合成培地で増殖させることに成功した。培養液は改良ハムF12培地を主として使用した。(2)この無血清無蛋白培養法は、ヒトの培養細胞株にも応用しうると考え、ヒト線維肉腫細胞株、悪性奇型腫細胞株に応用した結果両細胞株は、上記完全合成培地で長期間にわたって増殖させることに成功した。(3)マウス線維芽細胞株(m細胞)は、培養液中に多量のフィブロネクチンを産生していることを明らかにすると共に、トランスフェリンを異所産生している事を見出しそれぞれ培地中から精製した。(4)マウス細網細胞株(MR細胞、SP細胞)は、フィブロネクチンを産生していないことが、電気泳動法、生理活性定量法で確認された。(5)マウス細網細胞株(SP細胞)は、フィブロネクチンに対する膜受容体蛋白質は産生しており、外部からフィブロネクチンを添加すると膜受容体を介して細胞質内マイクロフィラメントの線維状再構成を誘導する。(6)ヒト由来線維肉腫細胞株は、フィブロネクチンの他に単鎖プロウロキナーゼを産生していることを見出した。この細胞株はヌードマウスに移植すると皮下に腫瘍を形成する他に、肺へ転移がみられた。この現象は、がんの転移におけるフィブロネクチンならびにウロキナーゼを介してのプラスミン活性化の関係で医学領域で極めて重要な知見と考える。(7)ヒト悪性奇型腫は、【α_2】-マクログロブリンを産生していることを見出した。(8)無血清培養液中で増殖する細胞株は、血清中の増殖因子と類似の蛋白質を産生している。
|
-
[Publications] 日本癌学会総会記事. 44. (1985)
-
[Publications] 日本病理学会会誌. 74巻. (1985)
-
[Publications] 日本病理学会会誌. 75巻補冊. (1986)