1985 Fiscal Year Annual Research Report
バイオテクノロジーによる新しいポリオ生ワクチン株の開発
Project/Area Number |
60870083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野本 明男 東京大学, 医, 助教授 (70112670)
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Keywords | ポリオ生ワクチン / 感染性相補DNAクローン / トランスフェクション / 回収ウイルス / 組み換え体ウイルス / 神経毒性 / in vitro マーカー |
Research Abstract |
小児マヒの病因であるポリオウイルスは、RNAウイルスであるために遺伝的に不安定であり、高い頻度で突然変異体が出現する。したがって生ワクチン株の品質維持に問題が生じるだけでなく、現存する生ワクチン原株も消失する運命にある。そこで本研究者らは、現存するポリオウイルス生ワクチン株の遺伝情報を二本鎖DNAの形で保存維持する系を確立することを目的に研究を遂行した。 まず3種類の生ワクチン株(Sabin 1株、Sabin 2株およびSabin 3株)のうち最もワクチンとして安全な株であるSabin 1株を選び、その全遺伝子に相当する相補DNAを、EcoR1リンカーを用いて、バクテリアプラスミドpBR325のEco R1切断部位へ挿入し、クローン化した。このDNAクローンはHeLa細胞にトランスフェクトすることにより、μg当り2〜5PFU、またはAGMK細胞に対しては0.1〜0.3PFUの感染性を示し、ポリオウイルスが回収された。 次にクローンの感染効率を上昇させるためにSV40の複製および転写開始点を持ち、さらにlarge T抗原をも持つベクターを使用し、感染性を検討した。その結果、HeLa細胞で約500倍、AGMK細胞で約50倍の感染効率の上昇が観察された。これら2種の相補DNAクローンと2種の細胞を使用し、回収したウイルスのワクチンとしての性質をin vitroマーカ試験およびカニクイザルを使用した神経毒性試験により検討した。得られた結果は、いずれの回収ウイルスも高品質のワクチンとして使用出来る可能性を示唆しており、特にAGMK細胞からの回収ウイルスが良い成績を示すことが判明した。 さらに、Sabin 2株、Sabin 3株にかわるより安全な2型、3型のワクチン株を作製する目的で、Sabin 2株、Sabin 3株の抗原性を担う遺伝子の相補DNAをSabin 1株相補DNAの相当する領域と入れ替え、型間での組み換え体ウイルスを作製する実験を遂行中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] J.Virol.53-3. (1985)
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[Publications] Virology. 142-2. (1985)
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[Publications] Science. 229-4718. (1985)
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[Publications] J.Virol.(1986)
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[Publications] Virology. (1986)