1986 Fiscal Year Annual Research Report
前がん状態にあるヒト培養細胞へのがん遺伝子導入によるがん化
Project/Area Number |
61015028
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
武藤 明 福井医大, 医学部, 教授 (90019547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小平 憲一 福井医科大学, 医学部, 助手 (90135054)
渡辺 良成 福井医科大学, 医学部, 助手 (70158674)
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Keywords | 前癌状態 / ヒト細胞の癌化 / 無限増殖性ヒト細胞株 / 癌遺伝子 / SV40T抗原遺伝子 / myc遺伝子 / ras遺伝子 |
Research Abstract |
ヒト胎児肺由来の2倍体線維芽細胞TIG-1にSV40T抗原遺伝子を導入し、不老不死化したTM6-1-1株をすでに樹立している。この株細胞の形は平担で丸く、染色体数は47%がモード40,45%がモード79であり、蛍光抗体法によりT抗原の発現が認められた。血清要求性は2%に低下しているが、軟寒天培地中ではほとんど増殖せず、前癌状態にあると考えられる。大腸菌スフェロプラストとの融合や燐酸カルシウム共沈法により、効率よくこの株へ遺伝子を導入できることを確めた。ニトロソグアニジンに対する感受性は、げっ歯類の細胞よりかなり高い。種々の濃度のニトロソグアニジンで処理し培養を続けても、形態学的にトランスフォームした細胞は検出されなかった。またヒトの活性H-ras遺伝子を導入しただけでは、この無限増殖性の株は癌化の徴候を示さない。一方、マウス形質細胞由来のmyc遺伝子をSV40のプロモーター・エンハンサーにつないだpSVc-mycを導入すると、細まった多角形に変化するとともに配列も不規則となり、軟寒天培地中での増殖能が出現する。v-mycを入れた場合も同様の形態変化を生じたが、軟寒天中で増殖性は認められなかった。ヒトの活性H-ras遺伝子を導入したTM6-1-1株に活性c-mycをさらに入れると、やはり細胞の形態・配列の変化が起こるのみならず、ニワトリ胎児胚(しょう尿膜上)で増殖するに至る。活性c-mycによって生じた形態的特徴は、次に活性rasを導入しても変化しないが、mycだけの時には認められなかったニワトリ胎児胚での増殖能がrasが加わることによって出現する。従ってこの系は、ヒト細胞における癌化の多段階説の検証、各過程に関与する遺伝子の同定等に対して極めて有用であろう。なお、これらの活性癌遺伝子を保有するヒト細胞系列のヌードマウスにおける増殖性については、現在検討中である。
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Research Products
(2 results)