1986 Fiscal Year Annual Research Report
JCウイルスによる小脳髄芽腫誘発と小脳分化との相関
Project/Area Number |
61015106
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
保井 孝太郎 神経科学総研, その他, 研究員 (90073080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長嶋 和郎 北海道大学, 医学部病理, 教授
木村 純子 (財)東京都神経科学総合研究所, 微生物, 主事 (20142151)
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Keywords | JCウイルス / 小脳髄芽腫 / 小児脳腫瘍 / in situ hybridization / T抗原 / 小脳顆粒層 |
Research Abstract |
JCウイルスは新生児ハムスター脳内に接種すると高率に小脳髄芽腫を誘発する。しかし生後5日目を過ぎたハムスターでは、小脳髄芽腫はあまり発生しなかった。このような特徴は、この系が小児脳腫瘍の良い実験モデルとなることを示唆している。そこで今年限は、小脳の分化がJCウィルスT抗原遺伝子の発現にどのような影響を与えているかを調べた。JCウイルス遺伝子の発現状況は、ウイルス接種ハムスター脳切片上のmRNAを、標識-sense mRNAを用いてin situ hybridization法によって検出することによって調べられた。ウイルス接種後5日目までは小脳にはT抗原mRNAは認められず、10日目に至って小脳内顆粒層および小脳分子層に検出された。接種後15日目では減少し、20目では認められなくなった。しかし、30日目には小脳内顆粒層にmRNAを有する異形細胞巣が出現した。小脳以外では、側脳室下胚芽細胞層にmRNAが検出された。また生後5日目にJCウイルスを接種した場合は、側脳室下胚芽細胞層にのみmRNAが認められた。全経過を通して小脳外顆粒層にはmRNAは検出できなかった。小脳内顆粒層細胞は小脳外顆粒層細胞が生後に下降してきたものと考えられている。小脳外顆粒層には、JCウイルスT抗原mRNAが認められず、小脳内顆粒層および分子層においてのみ検出されるという事実は、小脳顆粒細胞の成熟分化、つまり神経細胞としての形質獲得が遺伝子の発現に必要であることを意味するものと思われる。神経細胞の分化に関わっておこるJCウイルス遺伝子の発現は、調節領域遺伝子の働きと関連しているものと思われる。この調節領域遺伝子の働きを、CAT発現系を用いて調べたところ、ハムスター脳初代培養系において、神経系細胞の特徴を有しない細胞においては、ほとんど働かない事がわかり、上記仮説を部分的に証明できた。
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[Publications] M.Matuda;M.Jona;K,Yasui;K.Nagashima: Virus Research.(1987)
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[Publications] M.Matuda;K,Yasui;K,Nagashima;W,Mori: Journal of National Cancer Institute.
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[Publications] 松田道行,保井孝太郎,藤岡保範,長嶋和郎: 神経研究の進歩. 30. 978-987 (1986)
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[Publications] K,Nagashima;M,Matsuda;K,Ikeda;J,kimura-Kuroda;K,Yasui;W,Mori: Progress in Neuropathology. 6. 145-163 (1986)