大気中粒子状物質の生体作用に関する実験的研究

1986 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 61030056
• Research Institution: Kagawa Medical School
• Principal Investigator: 中嶋 泰知 香川医大, 医学部, 教授 (30155717)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 魚住 光郎 大阪府立公衆衛生研究所, 公害衛生室, 室長 (50028495) ; 香川 順 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (90055955) ; 伊藤 春海 京都大学, 医学部, 助教授 (40026943) ; 増田 閃一 東京大学, 工学部, 教授 (40010615) ; 高橋 幹二 京都大学, 原子エネルギー研究所, 教授 (40027123)
• Keywords: エアロゾル / 粒子 / 肺機能 / 大気汚染 / 気道沈着 / 粒径分布 / 過酸化脂質 / 軽元素

Research Abstract

近年,大気汚染問題の中心課題となっている粒子,とくに微粒子による大気汚染の人体影響を解明するための科学的基礎を確立するため,昭和59〜61年の3ヵ年に亘り,工・理学と医学・生物学領域の研究者による学際的研究を行った。研究分担課題は、わが国での研究が諸外国に比べて著しく遅れている粒子の組成,実験的発生法,計測法,ヒトおよび動物吸入実験法,粒子荷電の影響,影響指標等の開発であり、次の成果が得られた。1)XRF+FAST法による軽元素を含む粒子元素の非破壊多元素同時分析法の確立、2)従来の方法では計測不能な超微粒子の計測法として、正コロナパルスを利用した新しい原理の計測器の試作,3)2段階電気炉加熱法による単分散の金属ヒューム微粒子の簡便な発生方法の開発に成果を得た。影響研究に関しては、4)凝集法による肺沈着率測定のための単分散標準粒子の簡便な発生法およびチンダロメーターによる吸・呼気中粒子の連続モニターシステムを開発し、5)一般環境大気中に普遍的に存在する硫酸エアロゾルの濃度自動制御型動物(ラット,モルモット)吸入実験システムを開発、整備し、影響指標として肺過酸化脂質および関連代謝酵素系の変動を検討し、【NO_2】【O_3】などと異なる成積を得た。6)光化学反応を利用して得た微粒子とガス状共存物質をデニューダー法によって分離した光化学S微粒子による長期(2年)連続動物暴露システムを開発、暴露動物(マウス)の肺に【NO_2】【O_3】に暴露では認められない、新しい組織学的変化を見出した。7)蛋白エアロゾルの表面荷電の違いによる吸入動物(マウス)への影響を免疫学的手法により追求し,正荷電蛋白は負荷電のものより生体影響の強いことが示唆される成績を得た。以上の研究により、わが国ではこれまで殆んど行われていなかったエアロゾル吸入実験が日常的に実施されるようになり、本研究班の成果は、今後、わが国における粒子の人体影響研究の活性化に貢献するものと期待される。

Research Products

• [Publications] 高橋幹二: 空気清浄. 22(4). 56-62 (1984)
• [Publications] 田町敏夫,高橋幹二: 京大原研彙報. 67. 57 (1985)
• [Publications] 高橋幹二,田町敏夫: 京大原研彙報. 69. 65 (1986)
• [Publications] Kanji Takahashi;Shin-ichi Kawamura: Technical Reports of the Institute of Atomic Energy,Kyoto University. 205. 1-40 (1986)
• [Publications] 東野達,高橋幹二: 第4回エアロゾル科学技術研究討論会論文集. 42-44 (1986)
• [Publications] 増田閃一;杉田直記: 静電気学会講演論文集'84. 137-140 (1984)
• [Publications] S.Masuda;T.Itagaki;S.Hosokawa;H.Kawahigashi: Record of IEEE/IAS 1985 Annual Meeting. 1384-1388 (1985)
• [Publications] 増田閃一,板垣敏文,細川俊介,河東晴子: 静電気学会講演論文集'85. 59-62 (1985)
• [Publications] S.Masuda;T.Itagaki: Proceedings of the Second International Aerosol Conference. 821-824 (1986)
• [Publications] S.Masuda;T.Itagaki;M.Kosakada: Record of IEEE/IAS 1986 Annual Conference. 1230-1234 (1986)
• [Publications] 増田閃一,板垣敏文,小坂田昌幸: 静電気学会講演論文集'86. 155-158 (1986)
• [Publications] 内藤允子,岩藤弘子: 岡山県環境保健センター年報. 10. 146-150 (1986)
• [Publications] 野上浩志,東恵美子,大山正幸,魚住光郎,中島泰知: 大阪府立公衛研所報,公害衛生編. 5. 23-31 (1984)
• [Publications] 野上浩志,東恵美子,魚住光郎,中島泰知: 大阪府立公衛研所報,公害衛生編. 6. 7-12 (1985)
• [Publications] 野上浩志,東恵美子,魚住光郎,中島泰知,門田永治,橋本重夫: 大阪府立公衛研所報,公害衛生編. 7. 17-24 (1986)
• [Publications] J.Kagawa: Atmospheric Environment. 18. 613-620 (1984)
• [Publications] J.Kagawa: Int.Arch.Occupational Environmental Health. 53. 345-358 (1984)
• [Publications] 香川順: 空気清浄. 22. 42-51 (1985)
• [Publications] J.Kagawa: Tokai J.Exp.Clin.Med.10. 349-353 (1985)
• [Publications] T.A.Cahill;Y.Matsuda;D.Shadoan;R.A.Eldred;B.H.Kusko: Nucl.Instr.Meth.B3. 263-267 (1984)
• [Publications] T.A.Cahill;R.A.Eldred;D.Shadoan;P.Feeney;B.H.Kusko;Y.Matsuda: Nucl.Instr.Meth.B3. 291-295 (1984)
• [Publications] 松田八束,伊藤憲男,仲伏広光: Radioisotopes. 33. 437-443 (1984)
• [Publications] Y.Matsuda;T.A.Cahill: Nucl.Instr.and Meth.B6. 574-584 (1985)
• [Publications] Y.Matsuda;N.Ito;H.Nakabushi: Ann.Rep.Rad.Ctr.Osaka Pref.26. 21-27 (1985)
• [Publications] Y.Matsuda;N.Ito;H.Nakabushi: Presented at the 3rd Symposium on Aerosol Science & Technology. August. 22-24 (1985)
• [Publications] Y.Matsuda;N.Ito: Ann.Rep.Rad.Ctr.Osaka Pref.27. (1986)
• [Publications] 溝畑朗,松田八束,坂本和彦,角脇怜: 大気汚染学会誌. 21. 83-103 (1986)
• [Publications] 中嶋泰知: 空気清浄. 22. 52-55 (1985)
• [Publications] 中嶋泰知: 文部省特別研究環境科学研究報告(B230). R20-(8). 11-13 (1985)
• [Publications] 中嶋泰知: エアロゾル研究. 1. 30-37 (1986)
• [Publications] 伊藤春海,藤堂義郎,村田喜代史,米倉義晴,藤田透,鳥塚莞爾: 呼吸. 3(4). 498-504 (1984)
• [Publications] 伊藤春海: 放射線医学大系(呼吸器・循環器 別冊). 39. 55-68 (1984)
• [Publications] 伊藤春海,村田喜代史,鳥塚莞爾: 呼吸. 4(6). 648-653 (1985)
• [Publications] H.Itoh;G.C.Smaldone;D.L.Swift;H.N.Wagner: J.Aerosol Sci.16(2). 167-174 (1985)
• [Publications] H.Itoh;G.C.Smaldone;D.L.Swift;H.N.Wagner: J.Aerosol Sci.16(5). 367-371 (1985)
• [Publications] H.Itoh;G.C.Smaldone;D.L.Swift;H.N.Wagner: J.Aerosol Sci.16(6). 529-534 (1985)
• [Publications] 高橋幹二 編著: "応用エアロゾル学" 養賢堂, 328 (1984)
• [Publications] 香川順: "大気汚染物質のレビュー複合影響(人への実験的負荷研究)" 日本科学技術情報センター, 39-56 (1986)
• [Publications] 香川順: "スーパークリーンテクノロジーマニュアル(空気中の粒子状物質-主として人体影響について-)" 環境技術研究会, 66-73 (1986)
• [Publications] J.Kagawa: "Aerosols-Reseach,Risk Assessment and Control Strategies(Experimental studies on human health effects of aerosol and gaseous pollutants)" Lewis Publishers Inc., 683-697 (1986)
• [Publications] 中島泰知: "微粒子ハンドブック(吸入粒子の体内沈着と排出)" 朝倉書店, 500 (1986)
• [Publications] 伊藤春海: "応用エアロゾル学" 養賢堂, 328 (1984)