1986 Fiscal Year Annual Research Report
生活環境下で自然気化した環境汚染物質ウレタンガスによるマウスでの発癌
Project/Area Number |
61035040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂本 幸哉 阪大, 医学部, 教授 (60028280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 大成 大阪大学, 医学部, 教授 (90089871)
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Keywords | ウレタンガス / マウス / ヒト生活環境 / 気化性物質 / 発癌 |
Research Abstract |
ウレタン(ethyl carbamate)は、その発癌性のため医薬品及その溶媒としての使用は1975年に禁止されたが、ウレタンの麻酔薬,有機溶媒としての価値はすてがたく、多目的な用途で知られている。しかし、ウレタンは昇華性に富むため、空気中に放出されるウレタンガスの生物作用が注目されるようになった。ウレタン結晶500〜600g入った容器中にブロアーで無菌空気を注入し、ウレタンを含有した空気をビニールアイソレーター中に送りこみ(351.8ppm)この中で4週 ICRマウスを24時間飼育したところ、殆んど全例(95%)に腫瘍(肺腫瘍,白血病等)が発生した。わずか6時間の吸入によっても、79匹中40匹(50.6%)に腫瘍が発生した。そこでヒト生活環境と同一条件、即ち1時間に3回の換気状態にし、同じビニールアイソレーター中に20gのウレタンを置き、自然に昇華する条件で、ガスを1,3,5日間吸入させた。その時のウレタン濃度は18.7ppmである。5ヵ月後にマウスを屠殺したところ、腫瘍発生率は、28/51(58.0%),47/51(92.0%),46/53(85.5%)、肺当りの腫瘍数も1.1,5.3,7.5と吸入日数に比例して上昇した。通常生活環境下でもウレタンは自然昇華状態で強い発がん性を示すことがわかった。1年飼育例では、私がこれまで経験したことのない様な強い発がん性を示している。 本研究では、ウレタンを経気道長期被曝のモデル物質として選んだが、得られた結果は環境中に含まれる微量の有害物質が長期間にわたり呼吸を介して体内に取り込まれた時、これまでの急性毒性実験では、全く予期できなかった様な結果が生じることを示唆している。我々は、呼吸による被曝はさけることができず、将来、環境有害物質の経気道、微量長期被曝研究が重要な課題となる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Higashi,T.: Japanese Journal of Cancer Research. 77. 139-144 (1986)
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[Publications] 東胤昭: 含硫アミノ酸. 9. (1986)
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[Publications] Nomura,T.: Genetic toxicology of Environmental Chemicals. Part B. 13-20 (1986)
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[Publications] Nomura,T.: Mutation Research. 190. 25-29 (1987)
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[Publications] Nomura,T.: Functional Effects on the Offspring after Parental Drug Exposure. (1987)
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[Publications] 野村大成: 病態生理. 5. 769-773 (1986)