1986 Fiscal Year Annual Research Report
血管壁の修復過程およびそれに関与する細胞の配列と機能およびその由来について
Project/Area Number |
61132007
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
野一色 泰晴 岡山大, 医学部, 助手 (60033263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 有一 (株)東レ, 基礎研究所, 主任研究員
山根 義久 小動物臨床研究所, 所長
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Keywords | 人工血管 / 平滑筋細胞 / 細胞配列 / 新生内膜 / 血管壁 / 血管壁治癒 / マトリックス |
Research Abstract |
人工血管植え込みを行うと人工血管周辺に平滑筋細胞や内皮細胞、線維芽細胞等の諸細胞や膠原線維、弾性線維、ムコ多糖等が付着してあたかも天然の血管壁の如き構築を作り上げてゆく、この血管壁形成は血管系研究にまたとないモデルを提供するものである。本年度は血管壁を構成する諸細胞のうち特に平滑筋細胞に注目し、その挙動にマトリックスがいかに影響を与えるかについて形態学的に検討した。材料としては、成犬の頚動脈を採取し、蒸留水に1時間以上浸潰して、浸透圧により血管壁を構成するすべての細胞を膨潤、緊満させたあと超音波処理によって破壊した。このようにして膠原線維と弾性線維を主構築とする人工血管の素材を得た。次に内面にヘパリンをイオン結合させ、壁全体を親水性エポキシ化合物で架橋して強度をもたせることによって、生体血管壁と同じマトリックスを持つ抗血栓性人工血管を得た。動物実験としては、体重8〜12kgの成犬20頭の頚動脈40本に作成した人工血管(内径2.5〜3mm、長さ6cm)を植え込み、植え込み直後から389日に至るまでの試料を得て、光顕的、電顕的に観察した。結果としては、40本のうち37本が開存した。壁内部の観察では、植え込み直後はマクロファージが散在的に認められるのみであったが、長期例では壁内部に平滑筋細胞、線維芽細胞等が侵入し、表面は内皮細胞が覆っていた。これらのうち、平滑筋細胞にはその配列に特徴がみられた。すなわち、壁の外膜側では、これらは血管の長軸方向に配列するのに対し、内膜に近い部分ではそれらは輪状に配列していた。この形態は一般の血管壁における平滑筋の配列様式と同じであった。布製人工血管の場合はそれは輪状にのみ配列し、ブタ尿管を素材とした人工血管では配列の規則性がみられなかったことがすでに明らかにされている。以上の結果、平滑筋細胞の配列にはこれを支えるマトリックスが大きな影響を与えていることが明らかとなった。
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[Publications] Y.Noishiki,T.Miyata,K.Kodaira: Trans. Am. Soc. Artif. Intern. Organs. 32. 114-119 (1986)
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[Publications] Y.Noishiki,K.Watanabe,M.Okamoto,Y.Kikuchi,Y.Mori: Trans. Am. Soc. Artif. Intern. Organs. 32. 309-314 (1986)
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[Publications] Y.Noishiki,Y.Yamane,Y.Mori: Jpn. J. Artif. Organs. 15. 331-334 (1986)
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[Publications] C.Nojiri,Y.Noishiki,H.Koyanagi: Trans. Am. Soc. Artif. Intern. Organs. 32. 350-356 (1986)