1986 Fiscal Year Annual Research Report
食品の加熱で生ずる発癌物質の遺伝子損傷作用とその促進・抑制に関する研究
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61210022
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
早津 彦哉 岡山大, 薬学部, 教授 (10012593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根岸 和雄 岡山大学, 薬学部, 助手 (70116490)
綿矢 有佑 岡山大学, 薬学部, 助教授 (90127598)
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Keywords | Trp-P-2 / N-OH-Trp-P-2 / DNA鎖切断 / 活性酸素 / N-OH-Glu-P-1 / 細胞内DNA / MeIQx / 青綿 / ヒト排泄物中変異原 |
Research Abstract |
食物を加熱調理すると強い変異原性を持つ物質が生成し、発癌性も有することが知られている。しかし、これら変異原の生体内運命や遺伝子傷害などの生理作用についてはほとんど明らかでない。我々は、この点に注目して研究を進め、代表的なTrp-P-2の代謝活性化で生成するN-OH-Trp-P-2にDNA鎖切断作用があることを見出した。本年はまず、(1)このDNA鎖切断に塩基特異性があるかを調べたところ、特異性はないことが分かった。(2)また、細胞内のDNAに対しても鎖切断を起こすことを見出した。この切断を起こす傷害は長時間持続することも分かった。また、細胞内のカタラーゼ量を増加させたところ鎖切断が減少したので、細胞内に入ったN-OH-Trp-P-2が分解して活性酸素を生成することでDNA鎖切断を起こしていることが分かった。(3)このN-OH-Trp-P-2の分解過程を詳しく調べたところ次のことが分かった。すなわち、N-OH-Trp-P-2にSODを働かせると急速にNO-Trp-P-2を生成し、NO-Trp-P-2に【O・_2^-】を働かせるとN-OH-Trp-P-2に戻る。従って細胞内でこの可逆的変換が起き、より安定なニトロソ体が生体内貯蔵型である可能性が示唆された。(4)N-OH-Trp-P-2の遺伝子損傷作用を修飾する因子としてミオグロビン・ヘモグロビン等のヘム蛋白がN-OH-Trp-P-2を分解してその変異原活性を失なわせることを明らかとした。(5)さらに、MeIQxをラットに投与し尿と糞を集め、それぞれ変異原活性のある排泄物に注目して分析したところ、三種の変異原性排泄物を分離し、その構造を決定した。(6)また、ヘテロサイクリックアミンの分離精製に有効であるブルーコットンをさらに改良することを目的としコットンの代わりにレーヨンを用いたところ吸着容量でより優れた性質を示した。また、陰イオン交換樹脂を支持体としたブルーレジンを調製し非常に有効であることを見出したので、新しい高速液体クロマトグラフィーの開発など今後の展開が期待できる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] H.Hayatsu: Environmental Health Perspectives. 67. 31-34 (1986)
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[Publications] K.Kikugawa: Japanese Journal of Cancer Research(Gann). 77. 99-102 (1986)
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[Publications] H.Hayatsu: Chem.Pharm.Bull.34. 944-947 (1986)
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[Publications] T.Kato: J.Agr.Food Chem.34. 810-814 (1986)
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[Publications] H.Hayatsu: Cancer Res.47. 791-794 (1987)