1986 Fiscal Year Annual Research Report
重金属代謝調節による重金属含有抗がん剤の効果増強法の開発
Project/Area Number |
61210030
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井村 伸正 北里大, 薬学部, 教授 (70012606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 正夫 虎の門病院, 泌尿器科, 部長 (80010304)
小山 裕子 北里大学, 薬学部, 助手 (60162088)
永沼 章 北里大学, 薬学部, 助教授 (80155952)
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Keywords | シスプラチン / アドリアマイシン / 制癌剤の毒性軽減 / メタロチオネイン / ビスマス |
Research Abstract |
メタロチオネイン(MT)合成誘導剤の前投与が優れた制がん剤であるシスプラチン(CDDP)およびアドリアマイシン(ADR)の抗腫瘍性を抑制することなく副作用のみを選択的に軽減することを見出した。この方法を臨床で利用することを目的として以下の検討を行った。(1)MT合成誘導剤によるADR毒性軽減機構:MT誘導能を有する次硝酸ビスマス(BSN)を様々な条件でマウスに投与したところ、心臓中MT濃度の高いマウスほどADR投与による死亡率および心臓毒性(脂質過酸化を指標とした)発現率が共に低値を示した。またコロン38結腸癌皮下移植マウスにおいてBSNは腫瘍組織中MT濃度に影響を与えずADRの抗腫瘍効果も抑制しなかった。これに対して心臓中MT濃度に影響を与えずに腫瘍組織中のMTを上昇させる銅の投与はADRの抗腫瘍効果を低下させ、心臓毒性は抑制しなかった。これらの結果から組織中で増加したMTがその組織でのADRの作用を抑制すると考えられる。MTはin vitroでのADRによる【0_2^-】生成を抑制し、またBSNは心臓中で【O_2^-】除去に関与すると考えられるMT以外の因子(スーパーオキシドジスムターゼ等)に影響を与えないことが判明したことから、MTが【0_2^-】などのフリーラジカル除去作用を発揮することによってADRの心毒性を抑制している可能性が考えられる。(2)ADRとCDDP併用時のMT合成誘導剤の効果:BSNの前投与によってCDDPの示す腎毒性およびADRの示す心毒性が同時に著しく軽減され、両制癌剤併用時には両者の副作用が共に抑制されることが判明した。(3)BSN前投与法の臨床検討:尿路性器進行癌にCDDP化学療法を施行した23例を対象にBSN前投与の効果を検討したところ、奏効率は対象群33%、BSN前投与群50%であり、BSN前投与によるCDDPの抗腫瘍効果抑制は認められなかった。またクレアチニンクリアランスを指標にしたCDDPの腎毒性はBSN前投与によって軽減される傾向にあった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] N.Imura,ed.J.H.R.Kagi: Metallothionein【II】,Birkhauser Verlag,Basel. (1986)
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[Publications] N.Imura,eds,S.Brown;Y.Kodama: Toxicology and Clinical Chemistry of Metals:Kinetic Aspects,Ellis Herwood Ltd.,West Sussex. (1987)
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[Publications] Y.Koyama: Toxiclo.Lett.31. 47 (1986)
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[Publications] A.Naganuma: Cancer Res.(1987)