1986 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト白血病ウイルスの発癌機構および感染の診断・予防に関する基礎的研究
Project/Area Number |
61210033
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
吉田 光昭 癌研究会, その他, 研究員 (80012607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 純一郎 癌研究所, ウイルス腫瘍部, 研究員 (70176428)
藤沢 順一 癌研究所, ウイルス腫瘍部, 研究員 (40181341)
清木 元治 癌研究所, ウイルス腫瘍部, 主任研究員 (10154634)
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Keywords | 成人T細胞白血病 / ヒト白血病ウイルス / HTLV / トランス活性化因子 / 発癌機構 / インターロイキン-2 / HTLV増殖機構 / HTLVワクチン |
Research Abstract |
ヒト白血病ウイルス(HTLV-1)は九州・四国地方に、集中して発生する成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスで、流行地域では15〜20%もの大人がこのレトロウイルスに感染している。我々はウイルス遺伝子の機能の解析を中心に、細胞の癌化機構の解明およびウイルス感染の診断・予防法の確立のための基礎的研究を行い、つぎの諸点を明らかにした。 1.ウイルスのLTRにトランスに働いてその転写を活性化するpX蛋白p40(X)は、細胞のIL-2およびそのレセプター遺伝子を活性化してその発現を増強する。レセプター遺伝子の活性化は、T細胞に特異的であることから、感染T細胞の異常増殖を説明することができる。p40(X)のこの機能はATL発症の初期段階を説明するものとして注目される。 2.第2のpX蛋白,p27(X)の作用は、転写活性化蛋白p40(X)により合成されたウイルスmRNAに働いて、それらの分子種の比率をコントロールすることにある。従って、これら2つのpX蛋白,p40(X)とp27(X)のバランスが効率の良いウイルスの増殖に必須である。 3.2つのpX蛋白のバランスに関する制御機構について検討し、p40(X)とp27(X)が 2回のスプライシングによって生じる1種類のmRNAから生成することを明らかにした。その結果pX遺伝子群はウイルス遺伝子発現を陰陽両方向にコントロールすることが明らかとなった。 4.遺伝子組換え技術を用い、大腸菌で大量に生産したenv蛋白をサルに免疫することにより、ウイルス感染に低坑性を誘導することが出来た。即ち大量生産されたenv蛋白はワクチン効果を示した。 今年度の研究によりATL発症の分子機構解明に手掛りが出来たと同時にウイルス増殖の制御機構の理解、ワクチンの可能性についても緒が得られた。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] J.Inoue: ENBO Journal. 5. 2883-2888 (1986)
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[Publications] M.Seiki: ENBO Journal. 5. 561-565 (1986)
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[Publications] J.Fujisawa: ENBO Journal. 5. 713-718 (1986)
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[Publications] J.Inoue: virology. 150. 187-195 (1986)
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[Publications] M.Yoshida: Hematological Oncology. 4. 13-20 (1986)
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[Publications] K.Yamaguchi: Hematological Oncology. 4. 59-65 (1986)
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[Publications] T.Kuga: Gene. 44. 337-340 (1986)
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[Publications] M.Matsuoka: Blood. 67. 1070-1076 (1986)
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[Publications] K.Nagashima: J.Virology. 60. 394-399 (1986)
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[Publications] T.Watanabe: Virology. 148. 385-388 (1986)
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[Publications] M.Yoshida: Annual Review of Immunology.
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[Publications] J.Inoue: FEBS Letter. 209. 187-190 (1986)
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[Publications] M.Maruyama: Cell.