1986 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギーイオンビームの固体表面での散乱と電荷交換過程
Project/Area Number |
61212001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
楠 勲 東北大, 科学計測研究所, 助教授 (30025390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千田 実 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (70179943)
北 重公 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (60006153)
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Keywords | イオンビーム / 固体表面 / 二次イオン放出 / SIMS |
Research Abstract |
昨年度に開発した表面研究用イオンビーム装置を整備して実験を開始した。最初はイオン源の構造について実験を繰り返しながら検討を行ったが、従来のものより特に高性能なものを得ることは出来なかった。イオンビームの質量分析には、真空装置に内藏した電磁石を用いる方式を採用し、予期した分解能と明るさを得た。真空度は表面研究に最低必要な5×【10^(-7)】Paに保つことができる。 【N^+】,【N_2^+】,【An^+】などの低エネルギーイオンビーム(10〜1000eV)をタングステン,チタンなどの試料表面に照射して散乱ビームの角度分布を測定し、放出される二次イオンを四極子マスフィルターで分析した。二次イオンとしては試料中の不純物K,Na,Ca,Al,Mg,Siなどが放出されるが、これらの相対強度は入射イオンのエネルギーや種類に著しく依存して変化することが観測された。このイオン刺戟放出二次イオン質量スペクトルは試料を加熱して得られる熱イオン放射の質量スペクトルとは明らかな違いを見せている。従来、固体試料の分析に利用されているSIMS(二次イオン質量スペクトル)法においては、二次イオンの生成機構はイオン衝撃による局所的熱励起やスパッタリングによると理解されているものの詳しい解明はされず、分析法の解立に大きな支障を残したままになっていた。今回の我々の実験結果は、これらの根本的な問題の解明に対する有力なデータを与えたことになる。つまり、イオン衝撃法では局所熱平衝モデルのみでは理解できない現象が起っており、イオンビームと固体表面原子との直接的な電荷交換過程を運動量交換過程と同時に考虜しなければならない。我々はそのモデルについて理論的に検討している段階である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Housei Akazawa;Isao Kusunoki;Yoshitada Murata: Surface Science. 177. 577-592 (1986)
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[Publications] 楠勲,照井佳幸,佐々木俊明,早坂武雄,相沢勝雄,岩淵健二,伊藤栄一: 東北大学科学計測研究所報告. 35. 115-126 (1986)
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[Publications] 楠勲,村上純一,照井佳幸,小林隆,百目鬼英雄: 真空.