1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61222001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂本 澄彦 東北大, 医学部, 教授 (20014029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永嶺 謙忠 東京大学, 理学部, 助教授 (50010947)
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Keywords | ミュオン / 元素分析 / 医学診断法 |
Research Abstract |
π中間子、重イオンは生物学的効果が大きく、がん制圧に大きな力を発揮すると共にがん以外の疾患の治療にも応用範囲が広がっている。このように生物学的効果の大きなビームを病巣のみに与えることが理論的に可能な反面、もし病巣の広がりに誤認があり、病巣に照射のし残しがあったり、周囲の健常な正常組織に致命的な損傷を与えたりすると、この理想的なビームは逆にマイナスの効果を示すことになる。これを防ぐためには診断の精度を上げる必要があり、その一つとしてミュオンを用いる診断法は有用であると考えられている。ミュオンによる診断法は、π中間子使が減衰して生ずるミュオンが物質中に入ると物質を構成している元素特有の波長をもったX線が出て来て、そのX線の波長分析により物質構成元素の含有量がわかるため、正常組織内にできた異物の検出が高精度ででき、これはがんその他の疾患の診断に極めて有効旦有用な手段と考えられる。本研究の今年度の目標はミュオンによる診断がどのような疾患に利用可能か、世界のこの研究の現状はどうなっているかなどの調査検討を行なう事であった。その結果を要約すると、ミュオンX線分析は、従来から用いられているX線蛍光分析法や中性子による活性化分析などでは困難なC,N,O等人体の主成分を構成する元素分析が可能であり、しかも、生身の人への応用可能という他は余り考えられない特徴を持っていることが判った。これは、脂肪肝,骨そしょう症,ヘマクロマトーシス,動脈硬化症,各種の癌,Fe欠乏症,Cu欠乏症,甲状腺機能亢進症の初期診断などを可能にすると考えられることが判った。又この種の研究は、米国のLAMPFで研究されていたが、現在は加速器の事情で中断されており、世界の他施設、例えばカナダのTRIUMF,スイスのSINでも殆んど研究が行なわれていないことが判った。
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[Publications] 坂本澄彦: エネルギーレビュー. 6. 15-18 (1986)
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[Publications] 坂本澄彦: 電気学会雑誌. 106. 22-26 (1986)
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[Publications] A.P.Mills Jr.: Phys.Rev.Lett.56. 1463-1466 (1986)
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[Publications] R.Kadono: Phys.Rev.Lett.57. 1847-1850 (1986)
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[Publications] 坂本澄彦 著, 恒元博,舘野之男 編: "粒子加速器の医学利用-現状と将来への展望 π中間子及び重イオンの生物効果" 実業公報社, 271(87 (1986)