1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61222003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池畑 誠一郎 東大, 理学部, 助教授 (30107685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 文夫 東京大学, 理学部, 助手 (60170388)
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Keywords | ポリアセチレン / ソリトン / Peierls歪み / 中間子 / 格子上不純物 |
Research Abstract |
Peierls歪みを持つ一次元格子が格子上に於かれた不純物に対して安定であるかどうかは、実験的、理論的に未知の問題である。トランス型ポリアセチレンの格子上不純物に対する安定性の問題は大変興味深いが、格子上不純物を化学的に安定して作る事が困難で末だ調べられていない。現在のところこの種の不純物の効果を調べる事ができる唯一の方法は【μ^-】を用いる事である。ポリアセチレンに【μ^-】を照射すると格子上のCと【μ^-】-C複合核を作り、これはB(アクセプター)に相当する格子上不純物として働く。この不純物の効果は【μ^-】のNMRを通して調べる事ができる。【μ^-】のNMRは、高エネルギー研究所内東京大学中間子科学実験施設に於いて行った。共鳴周波数は約500MHzで測定温度は室温である。その結果、【μ^-】の共鳴位置は自由な【μ^+】の位置に比べ約400ppm高磁場側にシフトしている事が観測された。この400ppmのシフトは大変大きく、通常の化学シフトで説明する事は困難である。もう一つの可能性としてはPeierls歪みの安定性に関するものである。【μ^-】-C複合核はポリアセチレンの鎖の長さから考えると、一つの鎖に対して約1%程度存在しているものと思われる。この様な格子上不純物に対してPeierls歪みが不安定となり、一次元金属状態が生じそれによるCore Polarizationを考えれば本実験で観測されたシフトの方向と大きさを定性的には説明し得るものと考えられる。今回得られた結果は、一次元Peierls歪みを持つ格子は格子上不純物に対して不安定である事を示唆しており、応用面でも重要である。ポリアセチレンで観測されている中性ソリトン、荷電ソリトンは、Peierls歪みがその存在の基礎となっており、その格子上不純物に対する安定性も今後の興味深い研究課題である。
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