1986 Fiscal Year Annual Research Report
有機遷移金属錯体からの還元的脱離とβ-脱離における選択性
Project/Area Number |
61225004
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小宮 三四郎 農工大, 工学部, 助教授 (00111667)
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Keywords | 還元的脱離反応 / 有機金化合物 / 有機遷移金属錯体 / 配位子解離反応 / 三級ホスフィン / 炭素-炭素結合生成反応 |
Research Abstract |
有機ジメチル金(【III】)錯体、cis-Au【Me_2】(R)(【PR_3】)、をcis-Au【Me_2】(【I】)(【PR_3】)と種々の対応する有機リチウム試薬やグリニヤール試薬と反応させることにより合成した。これらの一連の錯体は再結晶により精製し、NMR,IRおよび元素分析から同定した。トリアリールホスフィンを配位子とするそれらの有機ジメチル金(【IV】)錯体の熱分解反応は錯体に対し一次であり、対応する還元的脱離生成物を二種与えた。反応の動力学的検討を行った結果、反応は配位子解離型で進行し、三級ホスフィンの解離速度【k_1】は配位子の電子供与性が増加したり、有機脱離基の電子吸引性が増加すると増加する傾向が見い出された。また、有機脱離基がアリール基やアルケニル基の場合、オルト位に置換基を持つなど立体的にかさ高くなると【k_1】が異常に小さくなることが明らかとなった。 一方、有機脱離基の選択性を還元的脱離生成物の生成比から検討したところ、R基が【Sp^3】炭素の場合、より電子供与性が強いと還元的脱離が起きやすいことが分った。しかしアリール基やアルケニル基の場合には、エタンの生成はほとんどなくアリール基やアルケニル基とメチル基の選択的カップリングが起きた。これは【Sp^2】炭素を含む有機基の還元田脱離反応の場合にはpπ軌道が関与してその活性化エネルギーが小さくなったのではないかと推定した。一方、R基としてアルキニル基を導入すると逆にエタンの生成のみが優先的となった。これはアルキニル基の強い電子吸引性のため金-アルキニル結合が強くなったためと考えられる。このように還元的脱離反応における有機脱離基の選択性はその炭素の性質と種類に大きく依存していることが明らかにされた。今後、さらに有機基Rの種類を変えたり、他の元素(たとえば遷移金属等)をR基として導入することにより、その選択性を解明してゆく予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Yoshinori HAYASHI: J.Am.Chem.Soc.108. 385-391 (1986)
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[Publications] Sanshiro KOMIYA: Chem.Lett.1065-1068 (1986)
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[Publications] Yuuko MIZUNO: Inorg.Chim.Acta. 125. L13-L15 (1986)
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[Publications] Sanshiro KOMIYA: J.Chem.Soc.Chem.Commun.1555-1556 (1986)
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[Publications] Yuuko MIZUNO: Chem.Lett.1477-1478 (1986)
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[Publications] Sanshiro KOMIYA: J.Organomet.Chem.319. C31-C34 (1987)