1986 Fiscal Year Annual Research Report
ドーパミンおよびドーパミン硫酸抱合体の血管壁に対する作用とその生理的意義
Project/Area Number |
61232009
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大和谷 厚 阪大, 医学部, 助教授 (30116123)
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Keywords | ドーパミン / ドーパミン硫酸抱合体 / フェノールスルホトランスフェラーゼ / アリルスルファターゼ / 組織分布 / 血中代謝排泄動態 / 高速液体クロマトグラフィー |
Research Abstract |
血中ドーパミンの由来とその代謝排泄動態,内因性ドーパミンの心血管系への作用とその生理的意義などについてはまだ不明な部分が多い。また、血中ドーパミンはその大部分が硫酸抱合体として存在しており、この抱合体の体内動態や生理的意義についてはさらに知見に乏しい。われわれは高速液体クロマトグラフィー-蛍光法の技術を応用して、生体試料中のドーパミンおよびその2種の硫酸抱合異性体の分別測定法を開発し、ドーパミン硫酸抱合体の生体内動態と血管壁に対する作用、さらに、その臨庄的意義、特に本態性高血圧症患者でのドーパミン代謝の異常の有無を明らかにすることを目的に研究を行った。今年度の研究で以下の点を明らかにした。(1)イヌ末梢組織にはそのほとんどが3-0-硫酸抱合体の型で存在し、腎臓,肝臓,小腸,心臓の順に高い含量を示した。(2)イヌ肝臓,腎臓には高いフェノールスルホトランスフェラーゼ(PST)活性が認められた。(3)イヌ肝臓のアリルスルファターゼによって4-0-硫酸抱合体は容易に脱抱合したが、3-0-抱合体ではほとんど脱抱合がおこらなかった。(4)イヌにドーパミン硫酸抱合体を静脈内投与したときの半減期は3-0-抱合体が67分,4-0-抱合体が53分であった。また、4-0-抱合体を投与したとき遊離型ドーパミンの増加が認められた。(5)イヌにドーパミン,L-ドーパを経口投与したときの速やかな3-0-硫酸抱合体の増加が観察された。(6)ヒト血中ドーパミン硫酸抱合体の大部分は3-0-硫酸抱合体であり、食餌接取後に著名な増加が観察された。完全静脈栄養患者ではこのような変動は全く認められなかった。これらの結果から、ドーパミン硫酸抱合体の生体内動態が明らかになり、外来性ドーパミンの排泄型として重要であることが示唆された。しかし、内因性ドーパミンの貯蔵型としての機能を完全に否定するものではなく、次年度以降、特に血管系に焦点を絞って研究を進めたい。
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[Publications] T.Yamamoto,: J.Chromatogr.342. 261-267 (1985)
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[Publications] A.Yamatodani: Jpn.J.Pharmacol.41 Supple. 35 (1987)
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[Publications] T.Yamamoto: Jpn.J.Pharmacol.39 Supple. 376 (1985)
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[Publications] T.Yamamoto: Jpn.J.Pharmacol.40 Supple. 116 (1986)
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[Publications] 橋爪喜代子: 日本内分泌誌. 62. 1064 (1986)
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[Publications] 大和谷厚: 病態生理. 6. (1987)