1986 Fiscal Year Annual Research Report
対話の論理と論証の論理-その歴史的展開と現代的諸相-
Project/Area Number |
61301001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上妻 精 東北大, 文学部, 教授 (30178214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚武 千葉大学, 人文学部, 教授 (10011305)
浅野 楢英 東北大学, 教養部, 教授 (20025042)
柏原 啓一 東北大学, 文学部, 教授 (30008635)
岩田 靖夫 東北大学, 文学部, 教授 (30000574)
坂口 フミ 東北大学, 教養部, 教授 (40012489)
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Keywords | 論証 / 否定 / 論理学 / 定義 / 公理 / 真理 |
Research Abstract |
本年度の研究目標は、論証の諸形態を歴史的観点から整理し、そこに見られる連続性と非連続性とを確認することに置かれた。研究分担者は各人の専門分野に応じてそれぞれの時代を担当し、代表的な著作の検討を通じて各時代に特有の論証形態を明らかにすることに努めた。 このうち浅野は、古代ギリシアにおける論証の起源を前ソクラテス期にまで遡って問題にし、アリストテレスによってその集大成がなされる過程に焦点を合わせながら、否定の概念の形式的取扱いが論理学の体系化に大きく寄与するものであったことを報告した。また野家は、十九世紀末に非ユークリッド幾何学の評価をめぐって戦わされた論争を辿りながらヒルベルトの「公理主義」の内容を検討し、それが従来の定義や公理の概念に大きな変革をもたらし、論証の歴史のターニングポイントとなっていることを指摘した。 さらに定例の研究会とは別に、研究分担者によってはカバーできない領域を補う意味で、外部から講師を招いて講演と討論を行った。科学史家のJ.ブラックモア氏は、論証をその機能の面から論理的論証,科学的論証,歴史的証に三分類し、それぞれの特質を比較しながら、いずれの論証も独立したものではなく、暗黙の共通前提とも言うべき背景的知識に基づいて成り立つものであることを主張した。この論証の被媒介性という視点は、論証と対話との相互関係を考察する我々の研究にとって大きな示唆を与えるものであった。また飯田隆氏(熊本大)は、「分析的真理」の概念についてフレーゲの考えに即して報告を行い、カント以来論じ尽くされたかに見えるこの概念を現代的見地から復権させる道を示して活発な議論を呼び起こした。 残された主題としては、中世論理学の再評価、超越論的論証の現代的意義、ロジックとレトリックの内的連関などがあり、これらを「対話」という観点から見直すことが次年度の課題である。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] 上妻精著 中埜肇編: ヘーゲル哲学研究所収. 89-111 (1986)
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[Publications] 上妻精著 加藤尚武編: ヘーゲル読本所収. 48-51 (1987)
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[Publications] 岩田靖夫: 思想. 746. 25-42 (1986)
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[Publications] 坂口ふみ: 中世思想研究. 28. 47-73 (1986)
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[Publications] 柏原啓一: 新・岩波講座・哲学. 13. 41-64 (1986)
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[Publications] 浅野楢英: 新・岩波講座・哲学. 3. 283-312 (1986)
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[Publications] 加藤尚武: 新・岩波講座・哲学. 11. 210-241 (1986)
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[Publications] 加藤尚武: 現代思想. 14-6. 182-192 (1986)
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[Publications] 天野正幸: 思索(東北大学哲学研究会刊). 19. 1-34 (1986)
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[Publications] 木下喬: 新・岩波講座・哲学. 9. 150-175 (1986)
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[Publications] 野家啓一: 現代思想. 14-11. 156-170 (1986)
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[Publications] 野家啓一 立松弘孝編: フッサール現象学. 257-303 (1986)
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[Publications] 野家啓一: 理想. 634. 2-18 (1987)
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[Publications] 加藤尚武: "バイオエシックスとは何か" 末来社, 182 (1986)
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[Publications] 野家啓一,他: "哲学の再構築" 南窓社, (1987)
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[Publications] 野家啓一,他: "〈知〉の理論の現在" 世界思想社, (1987)