Research Abstract |
本研究は,大都市における都市形成と地方自治体の行財政の分析を通じて今日の地域政策の特質を把握することをめざし,あわせて,大都市における調査研究を通じて,地方自治体と大都市地域社会の把握のために有効な,社会学的実証研究の手法の開発をこころみようとするものである. この二つの目的の達成のため,前年度にひきつづいて,研究組織による数次の研究会をかさねながら,調査対象地兵庫県神戸市についての調査を続行した. 今年度は, 一般的な資料蒐集に加えて,5種類のそれぞれ対象と内容を異にする調査票を用いた実態調査を実施した. 第1は「市民生活に関する実態調査」であり,対象世帯を抽出して,市民生活の諸相と市民の階層構成を構造的に把握することをめざした. 第2は,自治会長・町内会長を対象に,自治会の組織や運営をはじめ,それぞれの地域問題と,それに対処する住民の組織や活動を把握しようとした. 第3は「行政組織に関する実態調査」であり,市の管理職員を対象に,行政組織における意思決定のあり方を中心に,自治体の行政活動の実態ならびに意向をとらえることとした. 第4は「市会議員アンケート調査」であり,市政における意思決定や,議会と行政の関係,自治体行政の現状と問題等について,市会議員の見解をもとめた. 第5に,神戸市はその行政推進にあたって多数の外廓団体を組織して活動させているが,その実態と問題点を明らかにするために,これらの関連法人を対象とする調査を行った. これらを通じて,今日の住民生活を送る上で必要とされる多様なサービスに対して,住民自身の互助的活動・市場的対応・公共政策の役割が,どのように関連しているのかが明らかになってきており,地方自治体の場面における公共政策と市民生活との連関の構造,いいかえれば現代における地域社会の存在形態が浮び上がりつつある.
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