Research Abstract |
循環器疾患の一次予防のための基礎資料を得るため, 循環器疾患と栄養に関する国際共同研究の一環として, 同一国際基準で日本各地の地域(弘前, 富山, 大田, 広島, 別府, 久留米, 沖縄)の調査を初年度に引き続き共同で実施した. 各地域では, 50ー54才の男女についてランダムサンプリングでそれぞれ100人ずつ抽出し, 空腹時の採血とアリコートカップで24時間尿の摂取を実施し, 身長, 体重などの計測と共に, 既往歴, 遺伝歴, 食習慣について聞き取りを行った. 血液は赤血球, 血漿を分離し, 尿は一定量を凍結保存し, 島根医大に陸送ないし空輸し, 国際的に標準化された方法で分析した. 測定項目は血液については総コレステロール, HDLコレステロール, さらに脂肪摂取の種類について精査する為血清の燐脂質中の脂肪酸を測定した. 尿については, 初年度に引き続き, a, K, クレアチニン, さらに蛋白摂取の指標として尿中タウリン, メチルヒスチジン, 尿素を, また喫煙の指標としてコチニンの測定を開始した. いずれも, 全サンプルについて測定を終了するのは3年目となるため決定的な結論は出せないが, 本年度に調査した, ブルガリア(ソフィア), タンザニア(ダレスサラム, ハンデニ, マサイ族), 中国(ウルムチ)などの成績や, 昨年度に調査し, 今年度に分析を終了したニュージーランド(ダネーデン), ソ連(コーカサス地域), エクアドル(キトー, ビルカバンバ), 中国各地(上海, 石家荘, 貴陽, チベット)と比較すると日本人の循環器疾患を栄養との特微が明らかになりつつある. すなわち, 食塩の摂取量は中国の内陸地域(石家荘, チベット)ソ連と共に多いが, K摂取量はニュージーランド, ソ連, エクアドルに比ベて低く, 蛋白の摂取量はニュージーランド, ソ連, ブルガリアに比べ低いが, 血清総コレステロールはニュージーランド, ブルガリアより低いなど今後の日本各地の循環器疾患予防の貴重な知見が得られつつある.
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