1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61420007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸塚 洋二 東大, 理学部, 助教授 (40011712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶田 隆章 東京大学, 理学部, 助手
鈴木 厚人 東京大学, 理学部, 助手 (00100818)
木舟 正 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授
須田 英博 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授
小柴 昌俊 東京大学, 理学部, 教授
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Keywords | 太陽ニュートリノ / 陽子崩壊 / 標準太陽模型 |
Research Abstract |
神岡陽子崩壊実験装置である3000トン水チェレンコフ測定器を使って、太陽ニュートリノを検出するために測定器の改良を行った。現状の測定器では太陽ニュートリノが測定器内で起こす現象と識別が困難な擬似現象(バックグランド現象)が多く、太陽ニュートリノを確認することが難しい。S/N比を改善させるためには、最大のバックグランド源である3000トン純水中に含まれている放射性不純物(ウラン,トリウム,ラジウム)を除去することが必須である。本年度は実験データを取ると同時に放射性物質除去用の全自動イオン交換装置を既存の純水製造装置系に設置した。さらにこの設置にともない、装置系の繁雑を回避するために配管系統の簡単化を行った。新しい純水製造装置の運転は9月から始まり、現時点で3000トン純水中のウランの含有量は1/1000,ラジウムの含有量は1/100以下になった。これにともないバックグランド現象も減少し〜4事象/秒から0.3事象/秒に降下した。今後も装置の運転を続け、さらに1/10以下にバックグランド現象を落すことが目標である。これまでの実験データの解析から、太陽ニュートリノには3現象は検出されていない。これから太陽ニュートリノのフラックスの上限値を求めると4.3×【10^6】(1/【cm^2】/sec)(90%C.L.)になり、標準太陽模型から期待される4.0×【10^6】(1/【cm^2】/sec)のレベルにきており、"消えた太陽ニュートリノの謎"の解明にあと一歩である。実験解析結果は2つの国際会議(ニュートリノ'86(仙台),モリオン会議(フランス))で発表した。 本年度は純水製造装置の強化とともに、データ収集用磁気テープドライバ(高密度記録用)を導入しデータ収集の能率化を行った。 今後さらに低バックグランド状態でデータ収集を続け、ここ十数年来の課題であった、太陽ニュートリノの頻度の問題に結論を下すことができるであろう。
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