1986 Fiscal Year Annual Research Report
顕微反射分光法による有機伝導体の赤外および遠赤外スペクトルの研究
Project/Area Number |
61430003
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
池本 勲 都立大, 理学部, 教授 (00011601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 耕一 東京都立大学, 理学部, 助手 (40177796)
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Keywords | 有機伝導体 / 赤外反射スペクトル / 電子供与体 / 結晶構造 |
Research Abstract |
赤外から50【cm^(-1)】までの波数領域の顕微反射分光法を開発し、さまざまな有機伝導体の反射スペクトルを測定し電子状態を研究することにより高温有機超伝導体の開発の指針を得ることを目的とした。そのためフーリェ変換遠赤外分光光度計を購入した。試料室は真空とし二酸化炭素や水の影響を取り除いた。また、試料は直接望遠鏡を用いて観察でき、しかも試料のセッティングが早くできるようにした。一方測定試料としてS,Se,Teを含む電子供与体を合成した。本年度は非対称な電子供与体,DMET,に重点をおき、そのラジカル塩を作成し、その構造、物性を測定した。本ドナーは対応するセレノンとチオンの直接カップリングにより合成した。同時に得られる対称的なドナーと高速液体クロマトグラフィにより分離し精製した。DMET塩の単結晶は電気化学的方法により作成した。対応するBEDT-TTF塩より電気伝導度は高い。室温の電気伝導度はP【F_6】塩,300,As【F_6】塩;200,B【F_4】塩;250,Cl【O_4】塩;800,Re【O_(4塩)】;40,Au【(CN)_2】塩;2500S【cm^(-1)】である。【PF_6】塩,As【F_6】塩は室温付近で半導体的挙動を示し、その他の塩では低温まで金属的挙動を示した。Xバンドを用いたESRスペクトルの測定では、Au【(CN)_2】塩を除き低温でスピン帯磁率が急激に減少し、低温でこれらの塩が反強磁性体相であることが示唆される。【PF_6】塩とB【F_4】塩の結晶構造解析を行った。【PF_6】塩ではドナーのスタックがC軸方向に走っており、弱い二量体化が見られる。【BF_4】塩ではドナースタックがCおよびa軸方向に走っており、C方向では弱く二量体化しているが、a方向では殆んど二量体化していない。これが電気伝導度の挙動の違いの原因であると思われる。【BF_4】塩ではスタック間の短かい原子間距離は観測されず、この塩はBEDT-TTFのような二次元性を持たないが二つのスタック方向を持った新しいタイプの二次元性を持つ錯体といえる。
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[Publications] K.Kikuchi: Chem.Lett.419-422 (1985)
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[Publications] K.Kikuchi: Mol.Cryst.Lig.Cryst.125. 345-353 (1985)
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[Publications] K.Yakushi: Bull.Chem.Soc.Jpn.59. 363-366 (1986)
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[Publications] K.Kikuchi: J.Chem.Soc.,Chem.Comm.1472-1473 (1986)
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[Publications] K.Kikuchi: Mol.Metals. 19. 551-554 (1986)
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[Publications] K.Kobayashi: Synth.Metals. 19. 555-558 (1986)