1986 Fiscal Year Annual Research Report
一次元型高スピン有機分子とその分子間スピン整列機構
Project/Area Number |
61430007
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 公一 阪市大, 理学部, 教授 (70029403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手木 芳男 大阪市立大学, 理学部, 助手 (00180068)
工位 武治 大阪市立大学, 理学部, 講師 (10117955)
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Keywords | 高スピン有機分子 / スピン整列 / 一次元型有機強磁性体 / 電子スピン共鳴 / トポロジー / 架橋によるスピン整列の制禦 / 有機強磁性体の分子設計 / ポリカルベン |
Research Abstract |
初年度は本研究計画の基礎となる二つの柱について研究を行った。第一は一次元型有機強磁性体の研究で、できるだけ大きなスピンを持つ鎖状の芳香族炭化水素ポリカルベンをモデル化合物としてつくり、その安定性と確実な検出方法を検討するものである。すでに最大のスピンを持つ有機化合物として知られている9重項分子まで得ているので、次の段階として11重項分子について研究した。この成果は、ジアゾ前駆体と光分解で生成するポリカルベンを共に単一のゲストとして安定に取込むホストとして、いかに適切な単結晶を得るかにかかっている。多数の化合物について試みた結果、m-ジベンゾイルベンゼンの単結晶が最も良好であることが判り、11重項分子の存在を示す電子スピン共鳴(ESR)を得ることができた。しかしスペクトルは極めて複雑なために解析が困難であり、9重項を越えると検出方法について再検討を要することが判明した。第二は一次元型有機強磁性体間に強磁性的相互作用をもたらす架橋の研究である。これは純一次元スピン配列はパイエルス転移により自発磁化を持ち得ないからである。モデル化合物として、ポリカルベンを構成する三重項ジフェニルメチレンユニット間にメチレン基あるいはエーテル基を架橋した異性体(各架橋につき3種類、合計6種類)を合成し、各々のスピン配列をベンゾフェノンをホストとする単結晶ESR法により測定した。その結果は、架橋の導入位置と立体配座によって強磁性的あるいは反強磁性的に働くという複雑な様相を呈した。この現象はπ系のトポロジーネットワークを考慮し、メチレン架橋では超共後機構が、またエーテル架橋では超交換相互作用機構がそれぞれ支配的であるとすれば統一的に説明できることが判った。したがって化学修飾として架橋の位置を選ぶことによって、一次元鎖間のスピン整列を制禦することが可能になり、有機強磁性体への道を開くことができた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tadashi Sugawara: Journal of American Chemical Society. 108. 368-371 (1986)
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[Publications] Yoshio Teki: Journal of American Chemical Society. 108. 2147-2156 (1986)
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[Publications] Yoshio Teki: Journal of Chemical Physics.
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[Publications] Hiroshi Sakamoto: Journal of Magnetic Resonance.
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[Publications] Takeji Takui: Chemical Physics Letters.
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[Publications] Takeji Takui: Chemical Physics Letters.