1988 Fiscal Year Annual Research Report
水域生態系におけるピコ植物プランクトンの増殖速度と環境制御機構の研究
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61440001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 正征 東京大学, 理学部・植物学教室, 助教授 (50111357)
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Keywords | 水域生態系 / ピコ植物プランクトン / 藍藻 / 増殖速度 / 環境制御機構 / 捕食作用 |
Research Abstract |
過去2年間の研究で、ピコ植物プランクトンは貧栄養水域での優占性が著しく高く、中でも単細胞藍藻類が圧倒的に優占することが明らかとなったため、このグループに研究の焦点を絞った。ピコ植物プランクトンの増殖速度の推定法として、船上での装作性などを十分に考慮し、試料量を何段階にも変えて培養する方法と、濾別分離培養法の両者の併用が最適であると結論された。 三宅島東方の貧栄養海域において上記2方法を使って培養実験を行い表層水中での単細胞藍藻ピコ植物プランクトン個体群の潜在増殖速度と実際の水中での個体群サイズの変化速度を測定した。その結果、潜在増殖速度として0.10±0.04h^<-1>が、現場変化速度は1日を単位とした場合ほとんど0という結果を得た。 この潜在増殖速度と現場変化速度の相違は、水中でのピコ植物プランクトンの死亡消失の可能性を示唆する。特に捕食消失を検討した結果、数μmと、10〜20μmの大きさの生物による捕食の重要性が、濾別分離培養実験から明らかとなった。前者で40%、後者で60%の個体群消失を説明することができた。該当サイズの生物として、数μmでは無色鞭毛虫、10〜20μmでは繊毛虫の可能性が高く、これらの細胞中には多数の単細胞藍藻細胞の存在が、その特異な色素蛍光より確認された。 本年度の研究成果は平成元年4月の日本海洋学会大会、および8月の日本生態学会大学で発表の予定である。
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