1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61440005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 一夫 東大, 理学部, 教授 (60011441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 俊也 東京大学, 理学部, 助手 (40190459)
岡 良隆 東京大学, 理学部, 助手 (70143360)
佐藤 真彦 東京大学, 理学部, 助教授 (50124673)
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Keywords | 魚類 / サケ / ヒメマス / 性行動 / 鍵刺激 |
Research Abstract |
サケ・マス類の性行動は、雌による営巣活動(nestbuilding)と雄による求愛活動(courting)から成っている。サケ・マス類の性行動の神経的基盤を神経行動学的に解明する目的で、本年度はヒメマス(ベニザケの陸封型)およびシロザケを材料に用い、主に雌雄間で交される信号について解析した。 1.ヒメマス雌の外観に種々の程度に似せて作ったプラスチック製モデルを雄に呈示し、誘発される求愛行動(身ぶるい・quivering)の頻度を測定した。その結果、最も有効なモデルは、雌の外観(パターン・サイズ)を単純化したもの〔上半分が黒,下半分が白の横長長方形(6cm×24cm)〕であった。このモデルに似ていないモデルほど誘発される求愛行動の頻度は低かった。したがって、雄に求愛行動を誘発させる"鍵刺激"は上記の視覚的なパターンであると考えられる。 2.性行動中のシロザケのペアから体側筋(白筋:M.lateralis profundusepaxial division,血合筋:M.lateralis superficialis)の筋電図を記録した。このとき体壁に加速度センサーを装着して体振動も同時モニターした。このようにして性行動時における体振動のタイミングを解析した。その結果、雌雄間で交される体振動に由来する信号が放卵・放精の正確なタイミングを知る役割りを担っていることが示唆された。 3.性行動の発現に関与することが示唆されている脳部位(終脳腹側野,内側視束前野)からの出力は、いくつかの中継を経て最終的には脊髄に下行し、脊髄に存在すると考えられる"運動パターン形成回路"を賦活し、その結果関連諸筋の協調的な活動パターンを発生させるものと考えられる。そこでコバルト・リジン法を用い、脊髄への下行性繊維の起始部位および軸索の走行を調べたところ、網様体脊髄路・赤核脊髄路・前庭脊髄路などの下行性経路が見いだされた。
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[Publications] Matsushima,T.: Zoological Science. 3. 563-567 (1986)
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[Publications] Oka,Y.: Journal of Comparative Neurology. 254. 91-103 (1986)
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[Publications] Oka,Y.: Journal of Comparative Neurology. 254. 104-112 (1986)
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[Publications] 上田一夫: 東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター報告. 12. 41-43 (1986)
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[Publications] Takeuchi,H.: Animal Behaviour. (1987)
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[Publications] Satou,M.: Animal Behaviour. (1987)