Research Abstract |
水稲品種ササニシキを供試し,収量形成に関連した以下の3項目について検討した. 1.分げつ出現へ及ぼす気温の影響:昼ー夜温が30ー25℃,24ー17℃,17ー12℃の区を設け,孤立個体について調査した. 葉齢に対する茎数増加は,低温ほど速かった. しかし,展開中の母茎先端葉に対し,その3節位下の分げつが出現する規則性は,すべての場合で認められた. そこで,主茎の生長(葉齢の増加)に対する分げつの生長を調べると,分げつの方が速く,その差は低温ほど大きかった. その結果,低温ほど高次位の分げつが早く出現した. 一方,特定の分げつが出現するかしないかを各区で比較したが差が認められなかった. すなわち,気温は主茎と分げつ間の生長速度の差に影響を与えていた. 2.栄養生長期における各処理が生殖生長期に形成される節間の長さや太さ,穂の大きさに及ぼす影響:2.1葉,5.1葉,8.1葉,11.1葉の各時期に生長抑制剤散布,植物ホルモン剤(エスレル,ブラシ)ライド,ジベレリン)散布,深水,横倒し,間引き等の各処理を行った. 節間の長さについては生長抑制剤や横倒し処理で伸長抑制効果が,茎の太さや穂の大きさについては,深水処理とジベレリン剤散布処理でやや増加傾向が,稈の力学的強さにかかわるとみられるケイ酸蓄積については,深水やジベレリン剤散布処理で増加する傾向が認められた. 3.米粒内の原形質膜ATPaseの分布および活性:登熟段階の異なる米粒についてATPaseの細胞化学的検出を行った. 登熟盛期になると,すべての糊粉細胞の原形質膜に強い活性が検出された. またデンプン貯蔵胚乳細胞では外測から3〜5層日までの細胞の原形質膜に活生が検出されたが,その程度は内部の細胞ほど少なかった. また,母体組織一胚乳間に原形質連絡がないことから,糊粉層および周辺部数層のデンプン貯蔵胚乳細胞は,アポプラストから同化物をプロトン駆動力により能動的に取り込むものと推察された.
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