1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61440013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 隆久 東大, 農学部, 教授 (30011844)
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Keywords | 酵素の構造と機能 / 酵素の活性制御 / アロステリック酵素 / L-乳酸脱水素酵素 / 遺伝子のクローニング / 遺伝子工学 / 分子設計 / 蛋白質工学 |
Research Abstract |
高度好熱菌Thermus caldophilus GK24のL-乳酸脱水素酵素(LDH)は、フルクトース1,6-二リン酸(FBP)により活性化されるアロステリック酵素である。このLDHの遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した。これに基づいて、得られたLDHのアミノ酸配列は脊椎動物の非アロステリック型LDHのものと約40%相同であり、従って好熱菌LDHの立体構造は脊椎動物のものと類似していると考えられる。好熱菌LDHはアルギニン修飾試薬(2,3-ブタンジオンなど)による化学修飾により、FBP非依存性の活性酵素に変換され、FBPに脱感作した。酵素が脱感作したのは、アルギニンのグアニジル基が修飾されることによりその正電荷が消失したことによると考えられた。化学修飾したLDHをトリプシンで分解し、修飾されたアルギニンを含むペプチド断片を精製し、そのアミノ酸配列を決定した。その結果、修飾された残基は173番のアルギニン(Arg173)であることがわかった。Arg173は、脊椎動物のLDHでは陰イオン結合部位(クエン酸、硫酸イオンなどが結合する部位)を形成する残基の一つであることが知られている。以上のような実験事実に基づき、部位特異変異によるDNAレベルの塩基置換により、好熱菌のアロステリックLDHを非アロステリック型の酵素に変換することを試みた。その際、21塩基の合成オリゴデオキシヌクレオチドをプライマーとして用い、正電荷をなくし、残基の大きさと親水性を保持するよう、Arg173(CGG)→Gln173(CAG)の変異を誘起した。得られた変異LDHは、計画したようにFBP非衣存性の活性型酵素であった。現在、この変異酵素の速度論的パラメータについて検討している。また、酵素の大量生産については、大腸菌のlacプロモータより発現させることによりある程度成功しているが、SD配列を強いものにすることにより、さらに効率よく生産されるよう検討中である。
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