1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61450006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青柳 正規 東京大学, 文学部, 助教授 (40011340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小佐野 重利 多摩美術大学, 美術学部, 専任講師 (70177210)
中山 典夫 筑波大学, 芸術学系, 助教授 (30137939)
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Keywords | ローマ / ルネッサンス美術 / 石棺浮彫 / ディオニュソス / 神話 |
Research Abstract |
昭和61年度の研究資料収集を中心とした研究を基盤として, 本年度(昭和62年度)は, 研究資料の補充, 整理分類, それに考察を行った. その結果, 収集した写真資料は約1200点, 資料カードは1300点に昇る. これらの研究資料に基く考察の結果は以下の如くである. (1)15世紀のルネッサンス美術家が実見したと推定できるローマ時代の石棺浮彫はかなりの数に昇るが, 石棺浮彫には同一の図像による作品例が多く, いずれの石棺であるのかを特定するには常に困難を伴う. この結果, 特定美術家が実見したことを証明できる石棺浮彫の数は極めて少い. (2)ルネッサンス美術家の関心を集めた石棺浮彫のモチーフは, 神話に関するものが多く, 特にディオニュソス・サイクルに属するマイナーデス, サテュロスの動きのある形像, パエトーンなど叙述性豊かなモチーフである. (3)ローマ石棺浮彫が直接ルネッサンス美術家に影響を与える場合もあるが, 多くの場合, 構想段階で原型は解体し, その構成要素が構図の中に点在するようになる. 前者の例は15世紀前半の作品およびデッサン段階の作品に多く, 後者は15世紀後半の作品に一般的である. (4)一方, 石棺浮彫は, 装飾的要素として構図の背景部分に描き込まれたり, 装飾モチーフの源泉となる場合もある. マンテーニャの作品には, このような例を見出すことが可能である. 以上のような事柄が判明したが, 尚, デザイン・ソースとしての石棺浮彫が, どのようにルネッサンス美術という社会的, 文化的背景の異なる美術に摂取されていったのかを解明する必要があり, 目下, この問題を検討中である.
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