1987 Fiscal Year Annual Research Report
行動の個体差の発現機序に関する行動遺伝学的・生理生化学的・生態学的研究
Project/Area Number |
61450010
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤田 統 筑波大学, 心理学系, 教授 (50015426)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 宏 筑波大学, 心理学系, 助手 (50177466)
牧野 順四郎 筑波大学, 心理学系, 助教授 (60015443)
岩崎 庸男 筑波大学, 心理学系, 助教授 (70092509)
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Keywords | 情動反応性 / 選択交配 / 行動遺伝分析 / 養母交換 / 野生化 |
Research Abstract |
1.Tsukuba情動系ラットのランウェイテスト諸測度についての古典的遺伝分析をさらに進めた. 結果は雌雄でそれぞれ合致する遺伝モデルが異なり, 選択指標である移動活動量において雌では優性効果のない中間遺伝を, 一方雄では低活動方向への指向優性を示す遺伝構成を持つことが分かった. また遺伝構成は日間で変化していることが判明した. 2.成体行動を規定する遺伝と生育環境のの効果を調べるため, 養母交換法を用いて攻撃行動におよぼす母親環境の影響を検討した. 被験体はTsukuba情動系の2系ラット, 養母交換にはcrossーinの2種のfosteringを, 攻撃は侵入者テストで測定した. 高情動系の母親は低情動系より養育行動に熱心で, 高情動系に育てらると体重も増加することが確認された. 攻撃には有意な系統差が見れたが, 系統におよぼす母親環境の影響は一義的ではなかった. 発達段階をおって母親効果を屐調べるとcross条件では60日齢で攻撃を低下させ, 90日齢では増大させる効果を持っていた. 養育環境の行動への影響は発表段階をおってダイナミックに変化することが示唆された. 3.齧歯類の穴掘り行動の実験的分析のために新しい土材と地下室観察装置が考案された. 穴掘り行動はラット3系統, マウス8系統について, さらに環境変数として照明条件の影響が検討された. ラットではフィールドでの観察と同じく高情動系の穴掘り優位が示された. 照明条件については地下室部を明るくした条件でも穴掘り行動が阻害されることはなかった. 4.投入以来既に2年以上にわたって野外人工フィールドで放飼されているTsukuba情動系ラットには実験室では知られていなかった行動系が観察された. 発情雌を多数の雄がその発情期間中ずっと追い回し, 再三交尾しかけるという行動である. この行動系が出現したのは低情動系のみであり, 生殖行動に見られる系統特異性と2系の個体数の年間変動との関連が示唆された.
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