1988 Fiscal Year Annual Research Report
認知に関連する事象関連電位の脳内発生機序に関する生理心理学的研究
Project/Area Number |
61450015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下河内 稔 大阪大学, 人間科学部, 教授 (60029999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志村 剛 大阪大学, 人間科学部, 助手 (80150332)
投石 保広 大阪大学, 人間科学部, 助手 (00093443)
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Keywords | 事象関連電位(ERP) / P300 / 生理学的発生源 / 背側海馬 |
Research Abstract |
人間の認知過程の生理心理学的メカニズムの研究や、種々の疾病者に認められる認知障害の程度や内容を特定するために、事象関連電位(FRP)は近年広く用いられている。とりわけ、情報的刺激の呈示後約300ミリ秒に誘発される陽性電位(P300)は、もっとも重要なERP成分として注目されている。従って、本研究は、特にP300の脳内発生起源を明らかにし、合わせてその心理学的特性を明らかにすることを目的として行った。実験には破壊や電気刺激のような実験操作が可能となるラットを用い、P300成分を誘発するためには、人間に用いられているものと同様な課題をラットに与え、その条件刺激によって誘発されるERPの解析を行った。課題には、(本研究補助金で購入した2個のスキナー箱を使用して)2種類の純音を用いたgo/nogoの弁別条件付けを、次いでgo/goの弁別条件付けをラットに行わせて両刺激に対するERPを測定した。条件付けの結果、潜時約700ミリ秒の陽性電位(P700)が、条件刺激によって大脳皮質から誘発されるようになった。詳細な分析の結果、このP700は動物の動きその他のアーチファクトではなく、大脳皮質から発生した脳電位であり、しかも、人間のP300と同定されるクライテリヤにも合致することから、それをP300類似の成分と同定することができた。このことから、ラットにおいても人間のP300と類似するERP成分が潜時の延長によってP700として出現することが判明し、P300の発生源やその神経生理学的機序をしらべるための動物モデルとしてラットを用い得ることが明らかとなった。本実験では、そのP300類似成分の脳内発生源を特定するまでにはいたらなかったが、将来、この動物モデルを用いることによって、P300の発生源を明らかにしうるのみならず、P300発生の生理学的機序、認知の脳内過程の研究にも踏込める可能性が開けたものと思われた。
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[Publications] Nageishi,Y.;Shimokochi,M.: International Pavlovian Society Conference Abstaract.2 (1987)
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[Publications] Yanai,K.;Nageishi,Y.;Shimokochi,M.: Regional Symposium on Evoked Potentials Abstract.48 (1987)
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[Publications] 下河内稔,投石保広,楊井一彦,小山幸子: 神経研究の進歩. 32. 149-162 (1988)
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[Publications] 楊井一彦,志村剛,投石保広,下河内稔: 脳研究会会誌. 15. (1989)
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[Publications] Yanai,K.;Shimura,T.;Nageishi,Y.;Shimokochie,M.: Nineth international conference on event-related potentials of brain.(EPIC IX)Report.9. (1989)