1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61450043
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
福田 アジオ 歴博, その他, 教授 (60120862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹本 康博 相模女子大学, 短期大学部, 助手 (00089385)
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Keywords | 「衆」組織 / 長老制 / 年齢順 / 衆議 / 村落運営 |
Research Abstract |
もっとも近畿地方的ともいうべき滋賀県の村落について、湖北・湖南および甲賀の各地域にそれぞれ調査対象村落を設定し、集中調査を実施した。その結果として、従来から予想していた村落構成、村落運営の特質を具体的に把握し、その歴史性をも史料調査によって明らかにすることができた。その重要な点は以下のごとくである。 1 村落の運営組織は行政的な面においては他地方の村落と同様の役職組織となっているが、村落生活に関する局面については村落独自の組織を形成していることが多い。甲賀郡水口町の各村落ではそれが顕著に発達している。十人衆とか十五人衆と呼ばれる、年齢順に就任する長老制の組織である。 2 村落の構成員が年齢順に就任する組織は長老制的なものとは限らない。湖北の下丹生では諸人十二人という組織があるが、これは青年層が年齢順に12人構成員となるものである。この個人が年齢順に組織に加わるという原則がこの地方の村落組織の大きな特色であり、日常的には種々の座席においても年齢順にすわる形にも示されている。 3 しかし、いわゆる年齢階梯制社会のように、年齢の上の者が下の者に対し権威があり、その上下によってものごとが運営されることは少ない。むしろ、組織の名称にしばしば「衆」が付けられているように、組織の構成員が集まり合議する点に特色がある。上下の組織でなく、衆議する横の組織であることが明らかとなった。 4 「衆」組織は近年は祭祀儀礼に活動が限定されてきているが、かつては村落運営全般において重要な位置を占めたことが明らかになった。特に近世においては「衆」組織が村役人よりも大きな役割をになった可能性も出てきたことは重要である。
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Research Products
(1 results)