1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61450043
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
福田 アジオ 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 教授 (60120862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹本 康博 相模女子大学, 短期大学部, 助手 (00089385)
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Keywords | 近畿地方村落 / 「衆」組織 / 長老制 / 年齢秩序 / 集落形態 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,最も近畿地方的と考えられる滋賀県の村落に重点をおいて調査を実施した. 特に本年度は湖北地方といわれる滋賀県北部の山村ともいうべき村落について集中的な調査を行った結果,山村といえどもやはり近畿地方の特質が貫徹していることが明らかとなった. それは,集落形態における集村にはじまり,村落組織における年齢秩序に基づく「衆」組織である諸人(モロト)十二人衆による祭祀,選挙と籤引を併用した長老制,村落中心の年中行事等に示されているものである. その相互連関を湖北の一村落である伊香郡余呉町下丹生において集中調査を行って把握し,分析を行った. また,滋賀県以外の近畿地方村落についても,昨年度調査で得られた資料の整理検討を進め,近畿地方村落の特質と認められる「衆」組織が一般的であり,さまざまな地域差をもちながらも,基本的な構造においては顕著な共通性があり,それは関東地方やその他の地方との明確な相違を形成しているといえる. 本年度の研究において新たに努力した点は,このような近畿地方的村落の特質ははたしてどこまで広がっているかを確認することであった. 近畿地方の周辺部に位置する三重県四日市市の村落および岐阜県岐阜市の村落について,その点の確認調査を行った. その結果,滋賀県や奈良県で見られた「衆」組織はこれらの村落では顕著でないが,しかし集落形態の集村,村落中心の年中行事等においては関東地方やその他の地方とは異なり,近畿地方的な特質を示していることが明らかになった. したがって,近畿地方村落の民俗的特質についても,「衆」組織を中核にする地域とそうではない地域の地域的相違に注目し,それぞれの歴史性をより限定的に考察する必要が出てきたといえる. したがって,来年度はそのような地域差に注目しての歴史性の分析を進めることになる.
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