Research Abstract |
今年度の調査研究も,前年度にひきつづき,当初計画どおり順調に進めることができた. 6〜7月にかけて,白應町瑞龍院龍門図書館所蔵「御譲本」のうち,前年度調査残りの部分をカードに収録化につとめ,夏休みまでに同図書館の所蔵する「御譲本」のすべてをカードに収録することができた. その結果,同図書館の所蔵するいわゆる「御譲本」の総点数は2856点にのぼり,その構成も,(1)旧林泉文庫所蔵本,(2)三宝寺旧蔵本,(3)伊藤儀左衛門旧蔵本,(4)その他 等から成り立っていることが明らかとなった. その中でも(1)の旧林泉文庫蔵本が量的にもその大半を占め,質的にも多くの「善本」・稀覯本が含まれており,今後の調査研究への利用が期待されることから,とりあえずこの部分の仮目録を作成し,『米沢史学』第4号に掲載した. 又, (2)の三宝寺旧蔵本は,村山郡天童(現天童市)の浄土宗寺院三宝寺が旧蔵したもので,内容的には佛書がほとんどある. (3)の伊藤儀左衛門家旧蔵本は村山郡山口村(現天童市山口)の名主,伊藤儀左衛門が幕末から明治にかけて収集・書写したものである. (ちなみに,伊藤儀左衛門家の地方文書類は「出洞国村山郡山口村文書」として戦後,明治大学に収められている. ) 又,これらの蔵書の入手経路については,上記の蔵書構成からもわかるように,当初我々が考えていた時期よりもかなり最近になって(戦後)瑞龍院に入っていることがわかった. すなわち,蔵書構成の大半を占める旧林泉文庫は,その生涯を上杉家の記録編集係を勤め,すぐれた郷土史研究の業績を数多く成し遂げられた故伊佐昇譲氏の収集したもので,同氏の死去後,遺族から上杉家へ寄贈され,戦後その一部が上杉家から瑞龍院へ譲渡された. 三宝寺旧蔵本・伊藤儀左衛門旧蔵本についても,ほぼ同時期に入手されたものと推定される. 9月以降は調査資料の中から今後の研究に資するものを抽出し,マイクロフィルムに収録,解題作成を行った.
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