1986 Fiscal Year Annual Research Report
日独農家における法意識の比較研究-親子契約の調査研究を中心として-
Project/Area Number |
61450066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
利谷 信義 東大, 社会科学研究所, 教授 (40013015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
J Jungnickel 東京大学, 社会科学研究所, 外国人研究員
広渡 清吾 東京大学, 社会科学研究所, 助教授 (60025153)
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Keywords | 親子契約 / 農場譲渡契約 / 農業後継者 / 相続 / 均分相続 / 隠居慣行 |
Research Abstract |
1.日本における親子契約の特質 1960年代後半から日本各地で見られた親子契約は、全国農業会議所と農業改良普及所の上からの指導と農業後継者育成資金の貸付という政策措置とによって支えられたものであった。したがって政策的推進の力が弱くなるとその普及状況は後退した。現在もなお行われている地策は、畜産・花・大規模稲作の行われている所であり、経営の合理化と後継者以外の相続人との相続関係の調整の必要性が、親子契約を内在的に支えている。以上のことは、西ドイツの農場譲渡契約が、均分思想の下で、農場の維持と相続人間の利害関係の調整という目的を追求して長年にわたる伝統を形成したのと異なる。しかし日本においても、今後相続問題がきびしくなるにつれて、親子契約が見直される可能性がある。それを示す意識の動きも調査報告において認められる。 2.日本における伝統的な隠居慣行と親子契約との関係 今回の研究は、日本における親子契約の源流を明らかにすることにも向けられている。現在の親子契約に関する調査地に属する群馬県,栃木県における古文書調査によれば、隠居した親と子の間に隠居分に関する文書がとりかわされた例をみる、とすれば、親子契約の伝統が全く日本の法意識の中に見られないとは言えない。もっとも、このことと現在の親子契約とを直結することは許されないであろう。私たちは、江戸時代の慣行が何故消えたかを明らかにすることを通じて、2の問題に接近したいと考える。 3.ドイツと日本の親子契約のちがいは、前者が資産譲渡契約に比重があり、後者は月給制,部門分担に比重がある点に存する。ドイツのばあい、農場維持が均分相続制に脅やかされていること、日本のばあい、後継者の確保に比重があり、均分相続の脅威をまだそれほど感じていない点に原因がある。だが今後変化する可能性がある。
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