Research Abstract |
男性一人ぐらし老人の家事能力の実態を把握するために, 面接による実態調査を実施した. その結果, 家事能力や家事情況の実態を統計的に分析し, 前年度の事例調査から得られた仮説の実証を検討してきた. その際に, 面接調査ということもあり, 家事の内容を, (1)食事の準備, (2)洗濯, (3)掃除,(4)買い物, の4点に限った. 調査の方法としては, O市を調査地域とし, 住民基本台帳より二段階無作為抽出で, 900名(15名×60地点)の65歳以上のひとり暮らし老人を抽出した. その中で回答が得られた477名(男96名, 女381名)について分析したものである. 調査から得られた知見としては, 次の3点を挙げることができる. 1.男女間の家事能力についての比較では, 男性ひとり暮らし老人の家事能力は女性に比べて極めて劣っているだけでなく, 家事に対する関心や興味も低いことが明らかになった. 同時に, 家事を実施する上で必要とされる設備や備品も不足がちであり, そのことがより家事機能の遂行を弱めているといえる. 2.男性一人ぐらし老人の食事の準備, 洗濯, 掃除, 買い物の4つの家事能力は相互に関連性が強く, 男性一人じらし老人では, ある家事能力が低い者は他の家事能力においても低い恐れが強いといえる. 3.男性一人ぐらし老人の家事能力と関連する要因は, 前年度の事例調査から仮説的に抽出されたが, それらの要因が家事能力と関連するとすべて統計的には実証されなかった. ただ, 次のような要因と家事能力は関連が深いことが示された. それらは, (1)本人の身体障害の程度, (2)妻との関係, (3)家事に関する情報・設備へのアクセス, (4)近隣との対人関係, である.
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