1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61460032
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高橋 利宏 学習院大, 理学部, 助教授 (60163276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝川 仁 東京大学, 物性研究所, 技官 (10179575)
真庭 豊 学習院大学, 理学部, 助手 (70173937)
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Keywords | 低次元電子系 / SDW / 【(TMTSF)_2】【PF_6】 / 【(TMTTF)_2】Br / 【^1H】-NMR / 磁気構造 / NMR緩和時間 / SDW転移機構 |
Research Abstract |
設備の整備状況:本年度研究経費の大半は研究計画通り6T-超伝導マグネットの購入にあてられた。本設備は12月末に納入され、試験運転に成功した。高圧セル用【^3He】クライオスタットの製作は次年度にずれ込んだ。 研究の進展状況:【(TMTSF)_2】【PF_6】のSDW相、並びに3.5Kにおける新たな相転移について圧力依存性の測定を開始し、次項の通りの成果を得た。また、【(TMTTF)_2】X系についてBr塩の単結晶を作成し、SDWの解析を開始した。 新たに得られた知見:(1)【(TMTSF)_2】【PF_6】のSDW相において、3.5K以下に約10Kのギャップを持つ新たな相転移が存在することを【^1H】-NMR緩和時間の測定から発見した。さらに6.5Kbarの圧力下で転移温度が2.0Kに降下するなど顕著な圧力変化が見いだされた。SDW特性は、高温相と違いがなく、転移の機構、特性の詳細は今後の重要な課題である。(2)【(TMTSF)_2】【PF_6】の圧力下におけるSDW振巾の温度依存性をはじめて測定した。圧力下での転移温度の降下にもかかわらず、絶対零度への振巾の外挿値が、殆ど変化しないことが明らかとなった。これは、山地により理論的に予測されていた重要な振舞で、SDW転移の機構に関する彼の理論の検証として評価すべきである。(3)【(TMTTF)_2】Brの単結晶における【^1H】-NMR信号を観測し、吸収線形の角度依存性を、金属相、SDW相においてはじめて詳細に測定した。SDW相における吸収線形は、磁気構造を反映して複雑な構造を持つことがわかった。SDWの波数、振巾の解析が進行中であるが、TMTSF塩とは大きく異なっていることが明らかである。 以上、本研究の目的である低次元電子系のSDW状態の系統的研究にとって重要な進展がみられたと考える。さらに磁場誘起相を含めた解析を継続する予定である。
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[Publications] T.Takahashi;Y.Maniwa;H.Kawamura;G.Saito: J.Phys.Soc.Jpn.55. 1364-1373 (1986)
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[Publications] T.Takahashi;Y.Maniwa;H.kawamura;G.Saito: Physica. 143B. 417-421 (1986)
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[Publications] T.Takahashi;Y.Maniwa;H.Kawamura;M.Murata;G.Saito: Synthetic Metals. 19. 225-230 (1987)